
狙いは「ブレトン・ウッズ体制」の再編
ドル高是正や安全保障負担要求もメニュー
相互関税や自動車などへの25%関税の撤廃を求めた米国との関税見直し交渉は5月30日、4回目の協議が行われたが、依然、決着の見通しは立っていない。
トランプ政権の関税政策には、米国内でも金融市場と企業、国民から想定していたよりも悪い反応を引き起こしている。関税策には行き詰まり感が出てきており、トランプ政権は今秋までにも関税策を縮小方向で大きく見直す可能性がある。
しかしトランプ関税は、1944年のブレトン・ウッズ体制に始まる戦後の世界秩序を抜本的に変革することを目指すトランプ政権の大きな構想、あるいは野望の一部に過ぎない。関税が行き詰まれば、トランプ政権は次の政策に重点を移していく可能性があるだろう。それが、ドル安政策だ。
トランプ大統領自身もかねて貿易赤字の原因に日本の「円安誘導」があると批判をしてきた。為替問題は、関税とは別に財務当局の間で協議が進められており、加藤財務相によれば、直近のベッセント財務長官との会談でも「為替の話は出なかった」とされる。
しかしベッセント財務長官は、「ブレトン・ウッズ体制の再編」を掲げ、(1)関税政策を通じた消費大国から製造大国への米国経済の転換、(2)ドル高是正と基軸通貨の地位維持の両立、(3)同盟国との安全保障の応分負担―を主張している。
米国が基軸通貨国として得ている特権は大きいのだが、トランプ大統領にとっては、戦後の体制のもと他国から不当に押し付けられた負担の象徴が、巨額の対外赤字だ。赤字解消の次の一手として「ドル安政策」を打ち出すことは、十分あり得ると考えたほうがいい。