「口を開けば会社の愚痴ばかり」「なぜか毎年人が辞めていく」「職場での雑談がない」
具体的な問題があるわけではないけれどなぜか居心地が悪く、モヤモヤする職場になっていないだろうか。そんな悩みにおすすめなのが、組織開発というアプローチだ。『いちばんやさしい「組織開発」のはじめ方』(中村和彦監修・解説、早瀬信、高橋妙子、瀬山暁夫著)では、職場のモヤモヤに効く組織開発のはじめ方を成功事例とともに紹介している。本記事では、職場にありがちな悩みについて、組織開発の専門家がお答えする。(取材・文 間杉俊彦、企画 ダイヤモンド社書籍編集局)

Q:若手のエース級社員が突然退職してしまいました。
優秀で将来は幹部候補とみなされていた若手のエース社員が突然退職してしまいました。今の会社のどこが気に入らなかったのか聞いても、何も答えてくれません。会社の何に失望してしまったのでしょうか。
A:“退職するのはあたりまえ”という前提に立った対策を
優秀な若手エース社員が突然の退職。理由を尋ねても明確な答えはなく、残された中堅社員やマネジャーたちは途方に暮れるばかり。
このようなケースは、近年珍しくありません。終身雇用制度が崩壊して以降、特に若手世代の間では、入社時から「合わなければ辞める」という意識を持つ人がほとんどです。彼らにとって転職は、むしろ自然なキャリアの選択肢なのです。
その背景には、現代社会の変化のスピードと、キャリアに対する価値観の多様化があります。一つの会社に長く勤めることが当たり前ではなくなった今、自身の市場価値を高め、つねに成長し続けられる環境を求めるのは自然な流れと言えるでしょう。
「辞めたら次がない」という昭和時代の感覚は過去のものであり、若手世代ほどより良い環境を求めて積極的に動く傾向があります。
一方、「周りに尊敬できるロールモデルがいない」「自分の意見が聞き入れられない」といった不満も、成長意欲の高い人材には致命的です。
総転職時代の「あたりまえ」とは
この傾向に対して多くの企業では、初任給の引き上げや職種別採用など、さまざまな対策を講じています。
組織開発的な観点でも、部下と上司でキャリアに関する関わり方について対話できる機会をつくってみたり、研修や1on1などを活用した人材育成施策の強化といった対策を講じている企業も少なくありません。
しかし、それでも優秀な人材の流出が止まらないのは、これらの対策が本質的な解決になっていないからです。ドライな見方をすれば、「もう引き止められない」という前提に立つ必要があるのかもしれません。
それでも、「将来こうありたい」「そのためにはこういう経験が必要だ」という部下の思いを上司が把握し、日々の業務や異動を通じて成長を支援していく。社員一人ひとりのキャリアプランを真剣に考え、成長の機会を提供し続ける。
そしてなにより、その重要な役割を担うマネジャーを育成すること。変化の時代においては、このような地道な取り組みこそが、長期的な人材定着のカギとなるのではないでしょうか。
■参考記事:若手エース社員が突然転職!?「人が辞めていく組織」の共通点
(本記事は、『いちばんやさしい「組織開発」のはじめ方』の著者によるオリジナルコンテンツです)