苦境や困難に直面したとき、すぐに悩んでしまう「不幸体質」の人がいる一方で、「絶対に悩まない人」もいます。そんな「悩まない人」になるための考え方を教えてくれるのが、書籍『不自由から学べること ―思いどおりにいかない人生がスッとラクになる33の考え方』です。12歳からの6年間を「修道院」で過ごした著者が、あらゆることが禁止された暮らしで身につけた「しんどい現実に悩まなくなる33の考え方」を紹介しています。
この記事では、本書の著者である川原マリアさんと、『ブレずに「やりたいこと」で食べていく起業』を執筆した「株式会社和える」代表の矢島里佳さんに「不自由の楽しみ方」をテーマにお話しいただいた内容を紹介します(ダイヤモンド社書籍編集局)。

「この仕事、向いてないかも…」と悩みがちな人に足りない“たった1つの思考習慣”とは?Photo: Adobe Stock

「徹夜」なんて、できなかった

川原マリア(以下、川原) 最近「燃え尽き症候群」ってよく聞くようになりましたよね。きっと矢島さんも、会社が軌道に乗るまではがむしゃらだったと思いますが、どうやって乗り越えてきたのでしょうか?

矢島里佳(以下、矢島) もちろん、全力で頑張ってきました。

 でも、そもそも“徹夜”できなくて……。子どもの頃から、絶対に寝ちゃうんです(笑)。だから、私は「1日8時間は寝る人間」だと、最初から割り切っていました。

 1日の中で起きていられるのは16時間。そのうち、生活の時間もあるから、働けるのはせいぜい8~10時間。それが私の「持ち時間」だと認識していました。諦めというより、最初から「そういう仕様なのだ」と思っていた感じですね。……おばあちゃんみたいですけど(笑)。

「この仕事、向いてないかも…」と悩みがちな人に足りない“たった1つの思考習慣”とは?
『ブレずに「やりたいこと」で食べていく起業』矢島里佳(著)、264ページ、日本実業出版社

川原 いや、それは本当に大事なことだと思います。無理をすると、どうしても続かないですもんね。

矢島 そうなのです。

 でも、逆に言えば「8時間しか働けないのだから、その中で最大限のパフォーマンスを出しなさい」という、これは“メッセージ”なのだと思っています。

環境に「自分」を合わせるのではなく、
自分に合った「環境」を探す

川原 なるほど、それは面白いですね。

 私は逆で、夜に強くて朝が本当に弱いタイプなんです。若い頃は「朝起きられない自分はダメだ」と責めていた時期もありました。でも、社会に出てから気づいたんです。「だったら、夜型の仕事を選べばいいんじゃない?」って。

 そこで選んだのが、デザイナーでした。夕方に仕事を振られて「明日の朝までにお願いします」っていうような、ちょっと無茶な要求をされることも多い仕事ですが、夜型の私にはそれが合っていました。無理に自分を型にはめるんじゃなくて、自分の特性を活かせる仕事をする。それが、長く仕事を続けるうえでとても大事だなと思います。

矢島 人によって最初から“設定”されているような性質ってありますよね。そこに抗おうとすると苦しくなるけど、逆に「じゃあ、従ってみようかな」と思うと、意外と自由になれるのですよね。マリアさんの本『不自由から学べること』にも書いてありましたが、「争わずに生きる」という視点は、皆さんに知ってもらいたいですね。

川原 ありがとうございます。私も昔は自分をコントロールしようとしてましたけど、それができなかった人間なので……。だからこそ今は「無理なものは無理!」、それでいいんじゃないかなって思っています。「自分はこういう人間なんだ」と、一回ちゃんと受け入れると、本当にラクになりますよね。

矢島 本当にそうですね。私は自己肯定感は高い方ではあるのですが、「なんでもできる人間だ」と思ってるわけではありません。

「弱さ」を否定せず、それを前提に生きる

川原 自己肯定感が高いからこそ、「できなくてもいいんだもん」って、受け入れられるのかもしれませんね。

 それに、そういう“自己受容”があるから、他人に頼ることもできるようになると思います。

矢島 本当にそうなのです。

 和えるの事業も、まさにそうです。「赤ちゃん・子どもたちに、こういうものを贈りたいなぁ」と思う。でも、自分ではそれを作れない。だから、職人さんたちにお願いしています。「自分にはできない」と認めるから、人を頼れるし、「職人さんたち、本当にすごいなあ」と、心から尊敬の気持ちが生まれるのです。

川原 「自分はこんな人間だけど、それでもいいんだ」と、自己受容することで見えてくることや、始まることがありますよね。

「let it be」――“なすがままに”という感覚って、大事だと思うんです。本の中にも書きましたが、聖書の中に、聖母マリアが天使から受胎を告げられたときに「お言葉どおり、この身に成りますように」と答えたという話があります。私は矢島さんの話を聞いていて、なんだかマリア様みたいだなって思っちゃいました(笑)。

矢島 ありがとうございます。

「こうあるべき」という思い込みから離れて、「私はこうだから、こう生きていこう」と決めるだけでも、人ってずいぶん軽くなれる。弱さを否定せずに、それを前提に生きる。そこから見えてくる景色って、すごく豊かですよね。

(本稿は、書籍『不自由から学べること』著者の川原マリアさんと、「株式会社和える」代表の矢島里佳さんによる対談記事です)

矢島里佳(やじま・りか)
1988年7月24日、東京都生まれ。二児の母。職人と伝統の魅力に惹かれ、19歳の頃から全国を回り始め、大学時代に日本の伝統文化・産業の情報発信の仕事を始める。「日本の伝統を次世代につなぎたい」という想いから、大学4年時の2011年3月、株式会社和えるを創業。2012年3月、幼少期から職人の手仕事に触れられる環境を創出すべく、“0歳からの伝統ブランドaeru”を立ち上げ、日本全国の職人と共にオリジナル商品を生み出す。事業承継・中小企業やブランドの原点を整え、魅力化をお手伝いする「伴走型リブランディング事業」を行い、地域の大切な地場産業を次世代につなぐ仕事に従事。自社で実践してきた、「日本の伝統を通じて、ご機嫌(ウェルビーイング)に生きると働くを実現する」講演会やワークショップも展開。その他、日本の伝統や先人の智慧を、暮らしの中で活かしながら次世代につなぐために様々な事業を創造。