苦境や困難に直面したとき、すぐに悩んでしまう「不幸体質」の人がいる一方で、「絶対に悩まない人」もいます。そんな「悩まない人」になるための考え方を教えてくれるのが、書籍『不自由から学べること ―思いどおりにいかない人生がスッとラクになる33の考え方』です。12歳からの6年間を「修道院」で過ごした著者が、あらゆることが禁止された暮らしで身につけた「しんどい現実に悩まなくなる33の考え方」を紹介しています。
この記事では、本書の著者である川原マリアさんと、『ブレずに「やりたいこと」で食べていく起業』を執筆した「株式会社和える」代表の矢島里佳さんに「不自由の楽しみ方」をテーマにお話しいただいた内容を紹介します(ダイヤモンド社書籍編集局)。

【育児の予想外にどう向き合う?】「育児と仕事」を両立している人が大事にしている「シンプルなこと」とは?Photo: Adobe Stock

子どもが生まれても、働き方の「スタイル」は変えなかった

川原マリア(以下、川原) 私、昨年長男を出産したんですが、フリーランスということもあって、育児と仕事との両立の難しさを実感していて…。

 矢島さんもお子さんが2人いらっしゃいますよね。子どもが生まれてから、働き方は変わりましたか?

矢島里佳(以下、矢島) 働き方そのものは、じつはあまり変わっていません。でも、時間の「配分」は大きく変わりましたね。

【育児の予想外にどう向き合う?】「育児と仕事」を両立している人が大事にしている「シンプルなこと」とは?
『ブレずに「やりたいこと」で食べていく起業』矢島里佳(著)、264ページ、日本実業出版社

川原 ご著書『ブレずに「やりたいこと」で食べていく起業』の中にも、「週に何日休んで、1日に何時間働くかを決める」と書いてありましたよね。

矢島 はい。このスタイルは起業初期からほとんど変わっていません。

 ただ、人生のフェーズごとに「今は誰のために時間をかけるか」はその都度見直しています。

 スタイルそのものを変えてしまうと自分自身が変わってしまう気がするので、そこまでは手を加えず、「配分」を調整するという考え方でやっています。

川原 自分の軸はちゃんと持ったうえで、状況に応じてやり方を変えるってことですね。「働くことは生きること」とも書かれていましたが、どちらをより重視していますか?

矢島 いちばんは「生きること」だと思います。「働くこと」は、生きることの一部に過ぎません。子どもがいるかどうかに関係なく、人間として生きることの中に、働くことが位置づけられると考えています。

 1日は24時間。24時間しかないとも言えるし、24時間もあるとも言える。その決まった時間をどう配分し、自分が機嫌よくいられるようにセルフマネジメントできるか。それが問われていると思います。

そうは言っても、子育ては「予想外」がつきもの

川原 わかります。私もそうありたいと思ってはいるんですが、子どもって、急に何か起きるじゃないですか(笑)。そういうとき、どう対処していますか?

矢島 全部「うけたもう」だと思っています。つまり、受け入れるしかない(笑)。どんな予定も、予定通りにいかない前提で動いています。予定はもちろん立てますけど、そこにとらわれすぎない。

 そして何かが起きたときは、「これは今、何かを学べと言われているのだ」と、いったん立ち止まる。そうすると、最終的には「これが本当の予定だったのだ」と思えるようになるのです。

 結局最後は、なるように導かれる。だから、抗ったところで問題が大きくなるだけ、そう思っています。

川原 私よりも修道者みたいですね(笑)。人間って、どうしてもすべてをコントロールしたがるけど、それに意味がないことも多いですよね。

矢島 もちろん、「こうしたい」という想いを持つことは大切です。子どもが生まれる前に、おおよその生まれる日は、事前にわかっているので、それまでにできる準備はしました。

 でも実際には、予定通りにいかないことも多い。そんなときは、自分を責めたり現実を憎んだりするのではなく、「思っていたのと違ったな」と、ただ潔く受け入れるしかないと思うのです。現実を受け入れる精神力が大切です。

不自由に感じるのは、「やりたいこと」と「でも、変えられないこと」が見えていないから

川原 全部が予定通りにいくとは思っていないからこそ、柔軟に動けるんですね。

矢島 はい。それに、自分ひとりで完璧に解決できるとも思っていません。

 自分には何ができて、何ができないのか。どこが確定していて、どこに余白があるのか。それを見極めたうえで、変えられないことは抗わないようにしています。

 私は子どもを預けるのは「1歳半からにしよう」と決めていたのですが、そうすると、逆算して「そのためには何をすればいいか」が見えてきました。

「不自由」って、じつは「ただなんとなく不満がある状態」に過ぎなかったりします。「育児と仕事の両立って、大変だな~」と思っているだけだと不自由さを感じてしまいます。その中でも、「育児でここは大事にしたい」「仕事でここは維持したい」と、自分がどうありたいかをよく考えておくと、それ以外は手放すことができるので、一人で抱え込まず、ご機嫌でいられるようになるのだと思います。

(本稿は、書籍『不自由から学べること』著者の川原マリアさんと、「株式会社和える」代表の矢島里佳さんによる対談記事です)

矢島里佳(やじま・りか)
1988年7月24日、東京都生まれ。二児の母。職人と伝統の魅力に惹かれ、19歳の頃から全国を回り始め、大学時代に日本の伝統文化・産業の情報発信の仕事を始める。「日本の伝統を次世代につなぎたい」という想いから、大学4年時の2011年3月、株式会社和えるを創業。2012年3月、幼少期から職人の手仕事に触れられる環境を創出すべく、“0歳からの伝統ブランドaeru”を立ち上げ、日本全国の職人と共にオリジナル商品を生み出す。事業承継・中小企業やブランドの原点を整え、魅力化をお手伝いする「伴走型リブランディング事業」を行い、地域の大切な地場産業を次世代につなぐ仕事に従事。自社で実践してきた、「日本の伝統を通じて、ご機嫌(ウェルビーイング)に生きると働くを実現する」講演会やワークショップも展開。その他、日本の伝統や先人の智慧を、暮らしの中で活かしながら次世代につなぐために様々な事業を創造。