しかし、「三単現」は、理解の妨げにならない。また、しばしば、ネイティブでさえ間違えて話しているのです。

学校で学んできたのは
スタンダード英語だった

 これまでのリンガ・フランカ研究は、こうした例に見られるように、世界の共通語としての英語の本質を明らかにしてきました。

 これまでの英語教育は、スタンダードな英語があって、いかにそれに近づけられるか、もしくは近づけないと通じない、というような前提に立ってきました。これは日本の英語教育に限ったことではありません。

 しかし、グローバル化の中で、英語が世界の共通言語として機能している。国や文化を超えて、多様な英語のバリエーションが使われていても、実用的かつ効果的なコミュニケーションが成り立っている。

 そうしたグローバル英語のコミュニケーションには、これまで学校で習ってきた発音や文法のルールのすべては必要でない。それだけでなく、それらにこだわっていると、かえって、コミュニケーションが阻害されてしまう。

 このような現代の英語の新しい姿が、ここ数十年で明らかにされてきたのです。

 しかし、まだまだこれまでの英語教育は、こうした研究結果に基づいてアップデートできていない。発音も文法も、世界の99.9%の英語話者が使っていないスタンダード英語を求めて、実用的な英語に必要のないところをじっくり、たっぷり、学ばされている。それが、現在の英語教育の現状なのです。

ノン・ネイティブ英語には
さまざまなメリットがある

「いやいや、それでもネイティブ英語かっこいいし、目指しちゃうよね」

「使えても現場でカッコ悪く思われたらビジネスにもプライベートにも支障が出るでしょ」

 そう思っている読者の方々。いくつかお伝えしておくべきことがあります。

 まず、発音でネイティブかそうでないかは、英語を勉強していない人でもわかる(注9)。それぐらい私たちの言語感覚は、発音のネイティブかそうでないかの違いに敏感なのです。

注9 Major RC(2007) “Identifying a foreign accent in an un-familiar language.” Studies in Second Language Acquisition. 29:539-556.