実際に、ネイティブ同士の会話のほうが誤解が生まれやすく、ノン・ネイティブを交えた会話のほうが誤解が少ない、といった研究報告もあるくらいです(注13)。ネイティブだと思われてしまっては、自分の主張が誤解されやすくなってしまうということです。

 つまり、そう、求めるべきはネイティブの英語ではないのです。グローバルな英語コミュニケーションに効果的な生きた英語を学ぶべきで、これまでの英語教育の要領ではマイナス面や無駄が多すぎるのです。

英語を使いこなす日本人は
文法や発音を重視しない!?

 私は、スタンフォード大学のあるシリコンバレー・ベイエリアにやってくる、日本人研究者や駐在員の方々と多く知り合ってきました。英語圏で生まれたり、若いときに海外に在住していた人たちもいますが、多くが日本生まれ、日本育ちの方々です。

 そうした皆さんはあまたの英語テストを攻略してきた強者。文法は完璧で英単語の量もあり、時間をかければきれいな発音で、正しい文法の英語を話すことができます。

 にもかかわらず、日常やビジネスのコミュニケーションの場で堂々とした英語が喋れるのはほんの一握りで、皆さんが苦労しておられます。

 そんな中、うまく英語を使いこなせる人の特徴は、やはり、発音や文法の正確さはそこそこにコミュニケーションを取ることにフォーカスしていることです。

 まさに、ここまで紹介してきたリンガ・フランカ研究の成果そのもの。細かい発音や文法は怪しくたってなんのその。堂々と流暢にアメリカ人を含め世界中からの人たちと、ビジネス、アカデミア、プライベートを謳歌(おうか)している人たちがいます。

 例えば、私の大好きな飲み仲間に、東大でもスタンフォードでも私の先輩にあたる方がおり、アメリカで起業されて、ベイエリアで活躍しておられます。

 マブダチなので本人の同意&許可つきで言わせてもらいますが、英語の発音はお世辞にもうまいとは言えず、文法も喋り英語では三単現のエスなんかはお構いなしといった感じです。

注13 Jenkins J, Cogo A, Dewey M(. 2011) “Review of devel-opments in research into English as a Lingua Franca.” Language Teaching. 44:281-315. 10.1017/S0261444811000115.