元交際相手に中傷するビラをばらまかれるなど酷い嫌がらせを受け、県警に相談していたにもかかわらず放置されてしまったが、この事件をきっかけに翌年、ストーカー規制法が成立した。
被害者が申告すれば警察がストーカーに警告や禁止命令を出すことができ、従わないと罰則がある。「告訴」があれば、摘発も可能だ。だが、法が出来たあとも、ストーカー事件は続いている。
神奈川県警で言えば逗子市で女性(33)が刺殺された事件で、なんと犯人の男(40)にストーカー被害を受けていた女性の住所を教えていたということさえあった。ここまで来ると、もはや県警はストーカー殺人をアシストしているとさえ言えるだろう。
ちなみに昨年度、警察に申告があったストーカー事案は1万9567件。だが、規制法違反で立件された件数はそれほど多くはない。そして、いまでも警察はストーカー殺人事件を「痴情のもつれ」と発表するケースもある。
殺人事件としての立件が
難しい可能性も
それでは今回、殺人事件として立件できるかというと、実はそれほど簡単ではない。ストーカー事案の担当は防犯部門だが、殺人や死体遺棄などは刑事部門で、神奈川県警は防犯と刑事は仲が悪いとされる。情報の共有ができるかどうか疑わしい。
加えて、今回の事件は遺体遺棄容疑として表面化したが、岡崎さんの死因は明らかになっていない。たとえ今後、白井容疑者が具体的に自供したとしても、物証などで裏付けるにはかなり高いハードルが残る。
警察庁の楠芳伸長官は8日、記者会見でこう述べた。「被害者の安全確保を最優先することが肝要で、各都道府県警察に通達している。神奈川県警には一連の対応状況を調査し、通達の趣旨に沿っていたか確認する」
言葉は丁寧だが、これは県警に対しかなり痛烈な批判をしていると言っていい。神奈川県警は言い訳や取り繕いに必死になるのではなく、警察としてなすべきことをしていなかったことを猛省してほしい。