孫さんの講演を聞いているとおもしろいことに気づきます。強く何かを伝えたいときは高い声で話しているのですが、そのあとに少し間をあけて聞いている人に質問を投げかけるときは低い声で話をしているんです。
「みなさん、これから何が大事だと思いますか?」といった問いかけをするときの声を使い分けている。
意識的にされているのか、無意識なのかはわかりませんが、その問いかけの瞬間に、聞いている人はグッと引き込まれていきます。
また、問いかけの前に間をあけることは聞く側の解像度を上げる効果があります。
間があると、聞いているほうは「次に何を言うんだろう?」と脳の中で「?」が生まれます。そして「?」と同時に脳は次に言いそうなことを勝手に予想します。ほんの少しの間なのですが、聞く人の脳はこんな動きをしているのです。
その間のあとに話されたことを聞きながら、脳は「自分が予想したこととの乖離を一致させよう」とします。つまり理解しようと脳が努めるのです。
まくしたてて、間をとらずに話し続けると、聞くほうは右から左に話の内容が抜けていきます。

西 剛志 著
たとえば、いろいろ話したあとにその勢いで「だから笑顔が大事なんです」と言われてもイマイチ響いてきませんよね。そんなときはこんな感じで伝えたほうが聞く側には響きます。
「人生で非常に大事なことがあります。それは……(間)笑顔です」
どうでしょうか。同じことを言っているのですが、聞くほうへの伝わり方は大きく変わります。
ちなみにカリスマはこういう技法をよく使います。間の使い手なんです。
声がもし高かったとしても、高い声と低い声の使い分けと間を活用すれば、伝わる強度を上げることができるのです。