【大谷翔平、藤井聡太…】ストイックな人が時代のスターになる理由とは何か。
次々と新たなビジネスを仕掛ける稀代の起業家、佐藤航陽氏。数々の成功者に接し、自らの体験も体系化し、「これからどう生きるか?」を徹底的に考察した超・期待作『ゆるストイック』を上梓した。
コロナ後の生き方として重要なキーワードは、「ストイック」と「ゆるさ」。令和のヒーローたち(大谷翔平、井上尚弥、藤井聡太…)は、なぜストイックに自分に向き合い続けるのか。
『ゆるストイック』では、新しい時代に突入しつつある今、「どのように日常を過ごしていくべきか」を言語化し、「私自身が深掘りし、自分なりにスッキリ整理できたプロセスを、読者のみなさんに共有したいと思っています」と語っている。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

【大谷翔平、藤井聡太…】ストイックな人が時代のスターになる理由・ベスト1Photo: Adobe Stock

ストイックな人とは?

 大谷翔平選手、藤井聡太竜王・名人、井上尚弥選手……

 そのような時代の寵児と言われる人々を見れば、その姿勢が一目瞭然です。
 彼らは、決して自分の考えやスタイルを世の中の「正しさ」として押し付けたり、他人と論争することに時間を費やしていません

 これらを私は、「ゆるストイックに生きる」という定義づけをしています。

 その中身は、自分にしかできない「独自性」と、周りと調和する「タダ乗り」という2つの戦略が掛け合わされています。

 そう言うと、簡単に思えるかもしれません。

 しかし、実際には非常に難しいことです。
「言うは易く行うは難し」という言葉がまさに当てはまります。

 なぜなら、一見すると正反対のスタイルを同時に実行することが求められるからです

「独自性」を生み出すためには、世の中をじっくり観察し、自分なりの仮説を立て、腰を据えて創造に向き合う必要があります。

 これは極めて職人的な活動です。
「求心力」を発揮する必要があります。

 つまり、自分(あるいは自分の作品)に周囲の人々を惹きつける力を生み出す行為です。

 一方、「タダ乗り」では、別の力が求められます。
 外部環境を最大限に活用し、いかに自分の労力を節約しながら他人の力を借りられるかが重要になります。

 ここでは、自分の影響を外部に広げる「遠心力」が必要です。
 他人の力をうまく使うためには、すべてを自分でコントロールしようとせず、時には「手放すこと」が求められます

 つまり、中心に引きつける「求心力」と、外に広げていく「遠心力」という相反する力を同時に発揮しなければなりません。

 このバランスは想像以上に難しいものです。
 この相反するものを重ね合わせることこそが、「ゆるストイック」であり、その難しさでもあります。

こだわりを持ちすぎない姿勢

 求心力に偏りすぎると、0から100までこだわり抜こうとしてしまいます。

 これにより、得意でない分野にまで手を出して競争に巻き込まれたり、外部の力を活用しないために小さくまとまってしまうこともあります。

 たとえば、素晴らしい作品を作りながらも評価されにくいアーティストがその一例でしょう。
 もしかすると「SNSなんて邪道だ」と思って活用していないのかもしれません。

 一方、遠心力に偏りすぎると、独自性を追求することが「コスパが悪い」と感じられてしまいます

・「安く仕入れて高く売る転売活動のほうがコスパがいい」
・「流行をマネするほうが効率的だ」

 そのように短絡的に考えてしまいます。
 転売業や投機家のように合理性を重視するイメージです。

 しかし、自由市場では情報格差はすぐに埋まります。
 新しいチャンスを求めて常に動き回らなければならず、かえって大きな成功が得られなくなるのです

 こだわりを持ちすぎず、かといって、コスパにとらわれない。
 たとえるなら、クリエイターのように創造的でありながら、トレーダーのように合理的であるという二面性が求められるのです。

 これが「ゆるストイック」の中身です。

 つまり、独自性を発揮すべき領域では徹底的にこだわり、その他の領域では徹底的に手を抜く。
 そんな効率的な切り替えが必要です。

 この「求心力」と「遠心力」を同時に発揮しながらも、状況に応じて柔軟に切り替えることこそが、成功へのカギとなるでしょう。

佐藤航陽(さとう・かつあき)
株式会社スペースデータ 代表取締役社長
1986年、福島県生まれ。早稲田大学在学中の2007年にIT企業を設立し、代表取締役に就任。ビッグデータ解析やオンライン決済の事業を立ち上げ、世界8ヵ国に展開する。2015年に20代で東証マザーズに上場。その後、2017年に宇宙開発を目的に株式会社スペースデータを創業。コロナ禍前にSNSから姿を消し、仮想現実と宇宙開発の専門家になる。今は、宇宙ステーションやロボット開発に携わり、JAXAや国連と協働している。米経済誌「Forbes」の30歳未満のアジアを代表する30人(Forbes 30 Under 30 Asia)に選出される。最新刊『ゆるストイック』(ダイヤモンド社)を上梓した。
また、新しくYouTubeチャンネル「佐藤航陽の宇宙会議」https://youtube.com/@ka2aki86 をスタートさせた。