どきどきするメイコ
「誰かに似ている」と言われて…?

 メイコはどきどきしてついて来たものの、健太郎の口から出る話題はのぶと嵩のこと。いささか拍子抜けであろうが、メイコはのぶのことを「まっすぐで気が強いけんど誰よりもやさしくて」と良く言う。家族思いである。

「メイコちゃんもよか女の子ったい」と健太郎に言われ、またどきどき。

 ちっともだんごが進まない。

 健太郎と嵩は今日の最終列車で東京に帰るという。

「さみしいですね」というメイコに「俺もったい」と返す健太郎。

 メイコは辛抱たまらず、立ち上がり、「うち好きな人ができたとです。おもしろうて一緒におるとたのしうて笑顔がすてきで」と思わず告白。蘭子(河合優実)は豪(細田佳央太)の告白を待ったが、メイコは自分から言った。ただ、明るくて面白くて、と特徴を語ったから、本人は健太郎のことを言っているつもりなのだろうけれど、これじゃあたぶん伝わらない。

「きっとうまくいくばい」と健太郎は他人事だ。

 でもメイコは「たまるかー」とひとり舞い上がる。

 そのとき、健太郎が急に近づいてきて、何をするのかと思ったら――

「誰かに似ている」とメイコの顔を凝視。

「のらくろみたいばい」と楽しげにのらくろの絵を描いて、メイコに手渡すのだった。

 まさかののらくろ。

 目がキッラキラして……というから当時の女優さんかと思うではないか。

 それがのらくろ。

 のらくろとは、1931年からはじまった田河水泡の漫画「のらくろ」の主人公。黒い犬・のらくろは猛犬連隊の二等兵として厳しい軍隊のなかで奮闘する。のちにアニメ化もされる人気作だった。

 健太郎は漫画が好きらしい。第24回では新聞連載漫画「フクちゃん」の話題を出していた。この「フクちゃん」は戦争がはじまると戦意高揚の内容に変わっていくのだが、もともと兵隊漫画ののらくろは戦争時どういう存在だったのだろう。

 このへんは迂闊には書けないが、この時代のカルチャーの内容は戦争となんらかの関わりはあるだろう。ただ、この時点では、楽しい漫画であり、のらくろは目がキラキラしている愛らしいキャラクターなのだ。