なぜなら、「30回噛もう!」が、「30回噛まなくてはいけない」という義務感に発展していく可能性があるからです。そうなると、脳はストレスを感じます。
ですから、噛む回数を決めずに、いつもより長く噛む工夫をしてみる、というのが正解なのです。
死亡リスクが高いのは
太りすぎ?やせすぎ?
スーパーエイジャー(編集部注/80~90代になっても新しいことに挑戦し、元気に前向きに若々しく生きている人)の特徴のひとつに、「太りすぎている人が少ない」という事実があります。
肥満はもともと健康によくないと言われますが、肥満度が高いと脳の白質が薄くなり萎縮してしまう傾向にあることがわかっています。肥満レベル4(BMI45.5)の人の脳は、外側が縮んで内側にも空洞ができていて、普通の人と比べて脳が10歳も老化していたそうです(肥満度はBMIという指標で示されますが、25以上が肥満で18.5以下が低体重)。
では、やせたほうがいいかというと、それも正しくありません。なぜなら、高齢になってからのやせすぎはかえって死亡率を高めてしまうからです。65歳以上の高齢者1万8727人を調べたリサーチでは、やせている人は女性で129日、男性で212日も寿命が短くなっていることが報告されています。
しかも、日本の高齢者は世界的にもやせている人が多いことが知られています。イギリスやアメリカと比べてもBMIが18.5以下の低体重の人が、約5~10倍もいるようです。
つまり、欧米に比べて本来もっと長生きできた人たちがより短命になってしまっている残念な事実があるわけです。
日本で35万人に対して行った調査でわかったことは、意外にも太りすぎよりもやせすぎのほうが死亡リスクが高かったことです。ちなみに最も死亡リスクが低かったのは、男性が「肥満度1」(BMI25~26.9)、女性は「標準だが肥満に近いレベル」(BMI23~24.9)でした。
そういった意味で、若いときはやせるのもいいですが、60歳以上になったら、太りすぎでもやせすぎでもない、やや小太り気味が脳にも体にも一番よい状態と言えます。