
日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月から金曜までチェックし、当日の感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年続けてきた著者による「見なくてもわかる、読んだらもっとドラマが見たくなる」そんな連載です。本日は、第35回(2025年5月16日放送)の「あんぱん」レビューです。(ライター 木俣 冬)
愛国精神に傾く理由を
考えさせられる朝の出来事
ある朝、のぶ(今田美桜)が起きると、蘭子(河合優実)が豪(細田佳央太)の作業着を見つめ、そっとなでていた。
これを見ちゃうと、銀座で遊興にふけっている嵩(北村匠海)に疑問を感じざるを得ないのぶの気持ちもわかる気がしてくる。不公平だなと思うし、不公平をなくすためにはみんなが兵隊さんの側に立つべきと思ってしまうのも無理はない。
ただ、みんなが同じになるということの危険性を現代のわたしたちはいくらか学んでいるはずなのだ。にもかかわらず、人間は気を抜くと同じ方向に流れやすいようだ。
そんなことを筆者は感じた第35回のはじまり。昭和13年(1938年)になり、のぶが女子師範学校に入学して2年、卒業の時期が近づいていた。
のぶが部屋でうさ子(志田彩良)たちと縫い物をしていると、黒井(瀧内公美)が現れる。
「柳井嵩子という差出人の手紙を何通も受け取っていますね」
バレちゃった。男子と偽名で文通していることが。
教室に呼び出されたのぶは、先生に糾弾される。
「ふしだらにもほどがある」「信じられませんね男女間の友情など」
そう言って手紙を検閲する黒井。