起業家のナフィア・ブシャラ氏は米シアトルのレストランで、密談ができるブースを探していた。同氏は半導体の設計を手がける秘密主義的なイスラエル新興企業、アンナプルナ・ラボの共同創業者であり、人目につかないように行動することには慣れていた。同社は注目を浴びることを極端に嫌い、自社サイトと呼べるようなものもなかった。だがブシャラ氏はその夜、世界的な巨大企業の大物幹部との秘密裏の会談を予定しており、特に慎重を期していた。その会談からは、テクノロジー業界の歴史で特筆すべき重要な取引が生まれることになる。ビールやワインを飲みながら始まった半導体に関する議論は最終的に、米アマゾンによるアンナプルナの約3億5000万ドル(現在のレートで約512億円)の買収につながった。そこから10年が経過し、この取引がアマゾン全体の成功にとって決定的なものであったことが明らかになっている。