花王Photo:SANKEI

このところ業績不振に陥っていた花王の業績に回復の兆しが見えている。2024年12月期は6期ぶりに最終増益となった。花王の業績はなぜ低迷してしまっていたのか。また、どのように復活への道を見いだしたのか。同社が重視する会計指標を踏まえて解説しよう。(中京大学国際学部・同大学院人文社会科学研究科教授 矢部謙介)

不振ブランドを次々と売却
業績が回復しつつある花王

 不振に苦しんでいた花王の業績が回復してきている。

 花王の2024年12月期における連結決算は、売上高が約1兆6280億円、親会社の所有者に帰属する当期利益(以下、当期利益)は約1080億円と前期比で増収増益となった。

 花王では、19年12月期から23年12月期まで5期連続での最終減益が続いていたが、ここに来てようやく復活を遂げつつある。

 その原動力となったのは、不振事業における事業構造改革だ。子ども用紙おむつの中国での生産終了や、茶カテキン飲料「ヘルシア」やペット用トイレ事業などの成長性や収益性が見込めない事業の売却を進めたことが、花王の業績回復を支えている。

 そして、そうした事業構造改革を推進する上で重要な役割を果たしているのが、花王が新たに導入した経営指標、ROIC(投下資本利益率)だ。

 そもそも花王といえば、ROICと密接な関係にあるEVA(経済的付加価値)を日本国内で先駆けて導入した企業として知られているが、22年12月期決算を公表した23年2月に「EVA経営を深化させるために、事業別ROICを導入」すると発表した。これまで花王がこだわってきたEVAに加え、ROICをKPI(重要業績評価指標)として併用することを打ち出したのだ。

 今回は、花王が業績不振に陥った背景には何があったのか、そして花王がEVAとROICを併用することにした理由について解説していこう。