塾のクラス替えで
傷ついてしまう子も
このような環境では、他者との比較を避けることができず、2年、3年と長期間にわたってそのプレッシャーにさらされることになります。こうした環境が続くと、子どもの心は少しずつ傷ついていきます。
例えば、勉強を頑張って良い成績を取れたとき、クラスが上がることがあります。その瞬間は子どもにとって、とてもうれしい経験になるでしょう。しかし、良い成績を維持するのは簡単なことではありません。次のテストで思うような結果が出せなければ、元の成績に戻ってしまい、クラスも元に戻されます。このとき子どもは「せっかく上がったクラスに自分はふさわしくない」と言われたように感じてしまい、大きなショックを受けることがあるのです。
こうした経験を繰り返すうちに「自分は頑張ってもなかなか成果が出せない」「他の子を追い抜くのはとても難しい」といった自己否定の感情が蓄積されていきます。そして次第に「頑張っても無駄だ」「これ以上、傷つきたくない」という思いが強くなり、やる気を失ってしまう子どもも少なくありません。これが勉強嫌いになる子どもが多い理由のひとつだと考えられます。
さらに、中学受験の大きな問題点として家族関係の悪化が挙げられます。この時期はちょうど反抗期と重なることが多いため、親御さんが良かれと思ってアドバイスしても、子どもがそれを素直に受け入れられず、反発してしまい、けんかに発展することが少なくありません。
また、反抗が過剰になると、親御さんの言葉に対して一切反応を示さず、無視するような態度を取る子どもも出てきます。こうなると、親御さんも大きく傷ついてしまいます。
親子間でのトラブルの増加をきっかけに、今度は両親の間で方針の対立が起こるケースも珍しくありません。「このままでは子どもがつぶれてしまうからブレーキをかけるべきだ」と考える父(母)親と、「このままでは合格できないからこそ、もっと頑張らせるべきだ」とアクセルを踏もうとする母(父)親。こうした意見の食い違いが夫婦げんかに発展することはよくあることです。
さらに深刻なのは、そのような夫婦げんかを子どもが間近で耳にしてしまうことです。
大好きな両親が自分のせいで言い争っていると感じた子どもは深く傷つきます。