「怒鳴る親」に育てられた子の行く末…親が感情を抑えられない“真の理由”親が笑顔で、家庭が安心できる環境であれば、子どもの記憶力も上がり、やる気も起きる(写真はイメージです) Photo:PIXTA

最近、「つい子どもを怒りすぎてしまう」「イライラが止められない」……という子育て相談が増えていると指摘するのは、公認心理師の山下エミリさん。親が怒りを抑えられず怒ってしまうのは、親自身の「心の成長」が未発達なために、感情が抑えられないという面もあるといいます。そこで、心理学に基づいた「心の発達」について『子どもの一生を決める「心」の育て方』の一部を抜粋して紹介します。

子どもを怒りすぎて自己嫌悪に陥ってしまう親たち

 まず最初に、「子どもに怒鳴って、自己嫌悪に陥ってしまった」方の相談例から紹介しましょう。

 万理子さんは5歳、3歳、1歳のお子さんがいます。長女を出産してから5年、本当に苦しい日々が続いていました。ほとんどワンオペ育児で、一人ですべてを抱え込んで孤独を感じ、一人で3人も育てられないと泣きながら生活していたといいます。

 万理子さんはお話をしていても人当たりがよく、とても怒鳴り散らすようなお母さんには見えません。でも実は、万里子さん自身が子どもの頃、「心の発達」の第一ステップである「基本的信頼感」(=自分や他人を信じる心、自分を大切に思える心)を親との関係で築けていませんでした。だから安心して自分の意見を言えず、いつも親の顔色をうかがって育ってきたのです。そして、本当の自分を抑えて生きてきたからこそ、子どもが自分と同じように我慢することができないのが許せず、イライラしてしまっていたのです。