今年の管理栄養士合格者は、全国で6908人。猛勉強を経て獲得した資格でもなかなか挑戦できない企業の共同開発に、簡単に大谷選手の名前が宣伝されているCMを見て、彼ら彼女らはどう思うでしょうか。そういう人たちの気持ちも考えるにつけ、「大谷翔平の周囲の人たちは、このCMで使われている言葉が強すぎるということに気づいていないのか」と心配になります。
大谷選手は、野球一筋に生きてきた男です。食品衛生についての広告にはかなり厳しい基準があることを知るのは無理があるでしょう。だからこそ、そういうリスクをチェックするのがスタッフの役割であり、共同開発したという会社の責任であり、CMを掲載するテレビや動画の会社の責任です。
企業が有名人との「共同開発」
という言葉に慎重になるべき理由
確かに、芸能人が自分の使っている化粧品やファッションのデザインを、化粧品会社やアパレル企業にアドバイスして、商品化しているケースはあります。「それと同じではないか」という意見もあるでしょう。しかし注意深く見れば、ほとんどのケースで「共同開発」という言葉は使っていません。あくまでも「コラボ」だったり、「アドバイス」であったりします。
たとえば、DIORのアンバサダーである横浜流星や、タイガー魔法瓶「タイガーボトルアンバサダー」の渡辺直美。この2人はその服を身に付けたり、インスタに製品をアップすることで商品の宣伝に寄与していますが、もちろん「共同開発」という言葉は使っていません。
ただし中には、共同開発という言葉を実質的に使っていると言えるケースもあります。その例が、フジテレビ社員とポーラによる冷凍食品です。以下は、メディアで報道された内容の一部です。
「フジテレビに所属する女性社員5人 椿原慶子、齊藤未來、竹俣紅、奥山未季子、秋元優里が、ポーラが2023年7月にスタートした新規事業の冷凍宅食惣菜『ビディッシュ(BIDISH)』で、フジテレビジョン(以下、フジテレビ)と協業し、フジテレビに所属する女性社員5人が考案した冷凍食品5品を2〜3月にかけて公式ECサイトで発売する」