この商品でも、テレビなどの公の発表の場ではポーラとフジの「協業」という微妙な言葉を使っていて、メディア向けのPR文書にのみ「共同開発」という言葉が使われています。それだけ「共同開発」という言葉は、広告基準でも関連法令でも、やはり微妙な表現だったのでしょう。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001503.000000084.html
 
 私は週刊誌の編集長でしたから、タイトル(キャッチコピー)には、かなり気を遣いました。そして、自信のある記事ほどきわどいタイトルを使わない方が読者も安心して読んでくれること、いや雑誌が記事に自信を持っていると見抜いてくれることを、経験上知っています。

 大谷選手がスポーツのビフォー・アフターでどんな栄養素を摂るかということに心を砕き、そのエッセンスが入っていると知ったら、ユーザーがその飲み物を飲んでみたくなるのは間違いありません。だからこそ無理な宣伝文句ではなく、「コラボ」や「アンバサダー」といった現実的な言葉を使用することを、メーカーにはお願いしたいと思います。

企業は大谷選手のブランドを
守り続けることに協力すべき

 大谷選手は今の日本にとって、宝石のように貴重な存在です。メーカーの現場が「これで売れる」と張り切る気持ちはわかりますが、それは大谷選手の栄養知識を生かした飲料を思いついたという点を、消費者にアピールするにとどめるからこそ、信用できるものになります。

 大谷選手も今や独身ではありません。今まではご両親は表にも出ず、大谷選手のビジネスにも介入しないというスタンスを貫いてきました。しかし、関係者が増えるにつれ、大谷翔平の名前にすがろうとする人は増えてきます。

 水原一平という通訳の嘘だらけの説明で、メジャー全体からも、大谷選手の行動にまで大きな疑惑がかけられたことを忘れず、周囲が慎重かつ大事に大谷選手の成功と人望を保ち続けることに努力することを願いたい。そう思って、あえて一筆啓上しました。

(元週刊文春・月刊文藝春秋編集長 木俣正剛)