大谷選手がメジャーリーグの超一流選手として、スポーツ栄養学に関しても十二分に研究し、メジャーでしかまだ知られていない栄養学の知見も駆使して、身体作りや調整に余念がないことは、承知しています。色々な誘惑を排して、野球のための鍛練と食事を貫く姿勢にも、日本人だけでなく、米国民の心を鷲掴みにしている理由があると思います。彼にケチをつける隙間など、本当にありません。
しかし、興和の「スポーツ向け飲料」は一般人が飲む飲料です。一般人がスポーツをする場合、体格のことを考えても大谷選手と同じ量の栄養素を摂取していいかどうかについては、きちんとした実験の積み重ねが必要になるはずで、大谷選手にその量を助言するノウハウはないはずです。
管理栄養士に必要な資格や、それだけのための勉強もしていないはずです。しかも、この飲料のHPをよく見ると、スポーツ向け飲料どころか、清涼飲料水と記されています。清涼飲料水に大谷選手との共同開発が必要なのでしょうか。
管理栄養士の資格を取っても
なかなか商品開発には携われない
基本的に食品会社は、商品開発には慎重を期しています。大抵の食品開発の現場では、新卒社員を採用する基準は大学院卒と決まっていて、大卒で管理栄養士資格を持っていても、なかなかやれる仕事ではないのです。
実際、今年の興和の採用基準を見ても、研究職、開発職、品質保証・品質管理職、医薬品プラントエンジニアなどは大学院修了が前提となっていて、大卒レベルは営業職など一般的な仕事しか求人はしていません。
実は、私は「文春」を卒業した後、岐阜女子大の副学長として4年間、学生の就職活動のサポートを経験しました。この大学は東海地区でも管理栄養士の資格取得に定評がある学科を擁し、管理栄養士を目指す学生は寝る間もないほど勉強して資格を取ります。
そして、管理栄養士の資格を取った以上、企業で「商品開発」がしたいという就活希望の学生の相談が毎年何人も私に寄せられてきます。数は少ないものの商品開発の求人がある企業を紹介するか、あるいは大卒でニーズがあるのは品質管理だけなので、大学院に進むか品質管理の仕事で納得するかを説得するのが、私の仕事の一つでした。