ANA JAL危機 過去最高業績の裏側#7Photo:PIXTA

“国際線バブル”が止まらない。インバウンドの追い風に乗り、ANAホールディングスも日本航空(JAL)も空前の好況を迎えている。同じようにもうかって見える2社だが、その裏には収益構造と路線戦略の明確な差がある。どちらが持続的成長を手にするのか。特集『ANA JAL危機 過去最高業績の裏側』の#7では、狂喜乱舞する国際線事業の裏側を読み解く。(ダイヤモンド編集部 田中唯翔)

絶好調の国際線だが
ANA・JALで稼ぎ方は異なる

「2025年3月期の国際線収入は、前期比で1割強増加している。今期も右肩上がりの状況だ。インバウンド需要が好調に推移していることが、国際線の好調を支えている」

 日本航空(JAL)国際路線事業部の平尾彰浩部長がそう語るように、国際線事業はかつてない好況を迎えている。

 観光庁によると、24年の訪日外国人旅行者数は3687万人。過去最高となった19年の3188万人を約15%上回った。25年は、9月時点で既に19年の年間記録と同程度の3165万人が来日しており、爆発的なインバウンド増加が国際線事業の強烈な追い風となっている。

 加えて、コロナ禍に各社が断行した機材の売却や米ボーイング社の航空機の納入遅延、サプライチェーンの乱れなどにより、爆発する旅客需要に対して座席の供給量が追い付いていない。

 これらの要因で需給が引き締まり、JAL、ANAホールディングス(HD)共に国際線事業はコロナ前の売上高を超えた(下図参照)。

 25年3月期の国際線事業の売上高は、ANAHDが8055億円、JALが6963億円。両社ともコロナ前に比べ20%以上増加している。

 同じように絶好調に見えるANAとJALだが、その「もうかる仕組み」は大きく異なる。国際線の単価や方面別の座席利用率を細かく分析すると、ANAとJALの戦略の差がくっきりと浮かび上がる。

 今の“国際線バブル”もいつかは終わる。機材が順次納入され、需給が緩めば、単価は下落しかねない。

 絶好調の裏側で、両社はそれぞれ異なる方向へかじを切り始めている。インバウンドと供給逼迫がもたらした追い風が弱まったとき、持続的に利益を上げられるのはどちらなのか。

 次ページでは、そんな両社の国際線戦略、収益構造の違いを徹底解剖する。