温泉やサウナは疲労回復にとって逆効果
熱いお風呂で自律神経は大忙し

「温泉に入っても疲れはとれない」、そう聞くと驚く人も多いでしょう。これはサウナなどでも同様で、汗をかいたら新陳代謝がよくなると思われがちですが、汗をかいても脱水が進むだけで血行がよくなるわけでもありません。むしろ、血流は水分が減ることで悪化します。こうした誤解があるため、温泉やサウナで大量の汗をかき、疲れをとろうとする人がいますが、むしろそれは逆効果なのです

 例えば、1泊2日の温泉旅行に出かけたとしましょう。短い滞在だし、せっかく来たのだからと自宅のお風呂より熱いお湯に何度も入れば、そのたびに体温や脈拍、血圧は上昇し、その調整のために自律神経は大忙しで、疲労は溜まる一方です

 42℃の熱いお風呂は、脳の温度を安定させたい自律神経に負荷をかけるだけ。実際、42℃の湯に30分間入浴していると、脳の温度は3℃上がることが示されています。42℃の湯に30分間入れば、ほぼ全員が熱中症を起こすことになります。熱いお湯に肩までしっかり浸からないと温泉に入った気になれない! 何回も入る! という人もいるかもしれません。しかし、かえって疲労を蓄積してしまっているのです。

ハードな運動はNG!通勤くらいがちょうどいい
運動がかえって疲労蓄積に!?

 運動で肥満を解消しようとする人が多くいます。もちろん、肥満は生活習慣病の引き金になりますので、健康のため適正体重を維持することは必要です。しかし、だからといって、仕事で疲れているにもかかわらず、ジムでトレーニングに励んだり、ランニングしたりするのは、脳と体にとって決してよいことではありませんし、場合によっては危険を伴うこともあるのです。

「仕事で疲れても、運動して汗をかくとリフレッシュできる」という声もよく聞きますが、それこそが大きな落とし穴。「意欲や達成の中枢」とも呼ばれる前頭葉の働きが疲労感を隠してしまいます。さらに、運動中、脳内ではエンドルフィンやカンナビノイドといった物質が分泌されます。これらは疲労感や痛みを消すために防御的に分泌されるもので、幸福感や鎮痛効果をもたらすことから「脳内麻薬」とも呼ばれます。長距離ランナーがある時点から辛さを感じなくなる、いわゆる「ランナーズ・ハイ」という現象も、これらの脳内物質が分泌されるからなのです。