広島市の平和記念式典にロシアをなぜ3年間招かなかったのか?暴かれた外務省の姑息なやり口【佐藤優】広島市が平和記念式典に外国の代表を招くようになったのは、1998年にインドとパキスタンが核実験を行ったことがきっかけ。2006年からは日本政府が承認している全ての国の代表を招待していた Photo:JIJI

毎年8月6日、平和記念式典を主催している広島市。今年は日本と外交関係がある全ての国と地域に「案内状」を送る方針を決めました。その中には、ロシア・ウクライナ戦争が勃発してから招待を取りやめていた、ロシアとベラルーシも含まれます。方針を変更した理由は何でしょうか。(作家・元外務省主任分析官 佐藤 優、構成/石井謙一郎)

ロシアとベラルーシを招かなかったのは…

 広島市は毎年8月6日、平和記念式典を主催しています。今年は日本と外交関係がある全ての国と地域に「案内状」を送る方針を決めました。その中には、2022年2月24日にロシア・ウクライナ戦争が勃発してからの3年は招待を取りやめていた、ロシアとベラルーシも含まれます。戦争が継続しているにもかかわらず、方針を変更したのです。その理由は何でしょうか。

「朝日新聞」が広島市に情報開示請求を行い、3年続けて両国を招かなかった経緯を明らかにしました。実は広島市はウクライナへの侵攻が始まった後も、ロシアとベラルーシを平和記念式典に招待する意向でした。それを外務省がこっそり妨害していたのです。

 4月14日の「朝日新聞デジタル」は、以下のように報じています。

〈ウクライナ戦争が始まって3ヵ月近くが経った2022年5月。広島市役所2階にある市民活動推進課の電話が鳴った。

 同課の複数の職員によると、電話の主は外務省職員だった。職員の一人は「何でロシアを呼ぶのか。電話はそういう趣旨だった」と証言する。

 その直前、松井一実市長は欧州連合(EU)の大統領にあたるミシェル首脳会議常任議長と市内で面会した。核兵器使用を示唆したロシアのプーチン大統領に被爆の実情を知らせるため式典に招くよう、ミシェル氏から提案された松井市長は、その場で招待する方針を伝えた。この職員は「外務省はこのことを知り、電話をかけてきたのかもしれない」と推測する