ちょっとしたコツを覚えれば、「いい声」は誰にでも出せる。話題の書籍『対話するプレゼン』の著者、岩下宏一氏は、「ほどよく脱力することが、いい声の第一歩」と言います。本記事では、プレゼンの場を「一方的に説明する場」から「対話の場」に変えることを提案した『対話するプレゼン』より、本文の一部を抜粋・加筆・再編集してお届けします。

いい声は、リラックスした状態から出てくる
よく通る声は、張り上げることではなくリラックスした呼吸から生まれます。
声の通りを良くしたい、もう少し「いい声」を出したいという方は、「腹式呼吸」を使った発声を意識してみましょう。
腹式呼吸とは、息を吸う時にお腹を膨らませ、吐く時にお腹をへこませる呼吸法です。
この方法を使うことで、喉や胸に余分な負担をかけず、安定した声を出すことができます。
俳優、歌手、アナウンサーといった声を使う職業の人々は、この腹式呼吸を基本として発声しています。
これに対して「胸式呼吸」は、胸を膨らませたり、へこませたりして行う方法です。
多くの人が日常的に胸式呼吸をしていますが、いい発声を目指す場合には腹式呼吸がより適しています。
1.あくびの発声で豊かに響く声を出す
リラックスした状態の声って、どんな声?ということをまずは体感しましょう。
あくびしているように喉を大きく開けて発声することを意識して発声してみましょう。
1.まずリラックスして立ち、喉がまっすぐになるように顔を上に向け天井を見るようにします。
2.口を大きく開け、そこから身体の中に向かって太い大きなパイプが通っているのをイメージして、あくびのような声を出してみましょう。
「はああああ…」というような声です。
それが声帯や周辺の筋肉がリラックスしている状態です。
この時の喉の状態を覚えておき、前を向いて話す時もこの声をイメージして出すようにします。喉の奥が大きく開いた状態となることで、力みなくよく通る声が出せます。
2.腹式呼吸を練習してみる
次に、腹式呼吸を意識するために、以下の腹式呼吸の練習法をご紹介しておきます。
あくびしているように喉を大きく開けて発声することを意識して発声してみましょう。
①あおむけになり、膝を立てる。両手で下腹部を強く押しながら息を吐く
②両手の力を抜き、「ハッ」と息を吸い込む。同時に、お腹を膨らませる
この吐く、吸うを20回繰り返します。
この訓練の時は、床面に腰がピッタリついていることを意識できると正しい姿勢がとれます。
この練習をすることで、腹式呼吸をする時の体の動きを確認することができます。
なお、実際には空気は腹に入るのではありません。
そもそも肺は胸部にあります。
腹部を大きく柔軟に膨らませると、肺の下にある横隔膜がそのぶん下に下がり、結果として肺に空気が多くため込めるようになります。
呼吸のコントロールを腹で、音を生み出すことだけを喉で。
作業を分担することができると、余分な力みがとれて大きな声が出せるようになっていくのです。
聞き手に狙いを定めて声を出す
発声練習についてご説明しましたが、いい声を相手に届けるのにもうひとつ大切なのは「届けようとする意識」です。
1人の相手をよく見て、声が届くように狙いを定めて話すことで大きな声が出るものです。
例えば、人前でのあいさつやプレゼンでは、全員に声が届いているかに常に気を配りましょう。
話し手の声が届いていなければ、聞き手はこんなリアクションをとります。
・固まったまま動かない
・首をかしげる
・キョロキョロして、他人には聞こえているのか見る
・左右どちらかの耳を前に向ける など
こういったリアクションが出てきたら、あなたの声は聞こえていないかもしれません。
その相手に向けて「声で射貫くような意識」を持って話してみましょう。
狙いが明確になると、声の通りは明らかに変わります。
意思のこもった、いい声になりますよ。