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組織の意思決定プロセスは、必ずしも丁寧かつ合理的に行われるわけではない。特に方針などがあいまいな環境下では選択機会、参加者、問題、解という4つの要素が偶然結びつく「ゴミ箱モデル」によって決まることもある。あいまいな意思決定を行う組織で「できる社員」がやっていることとは。※本稿は、高尾義明『組織論の名著30』(筑摩書房、ちくま新書)の一部を抜粋・編集したものです。

組織のよりよい意思決定を決める
規範的モデルと記述的モデル

 ビジネススクールの経営組織論の講義ではさまざまな理論枠組みを取り上げるが、ジェームズ・マーチ&ヨハン・オルセン『組織におけるあいまいさと決定』で紹介されているゴミ箱モデルの受講生からの評判は、授業直後には良くないことが多い。

 しかし、最終回に全体を振り返ってもらうと、強く印象に残ったという感想が得られることが多いのもこのゴミ箱モデルである。

 詳細は後ほど取り上げるが、ゴミ箱モデルとは、あいまいな状況における組織の意思決定プロセスを扱った記述的モデルの1つである。その特徴を理解するには、まず記述的モデルと規範的モデルの違いを確認しておく必要がある。

 規範的モデルとは「このようにすべき」であることを提示するモデルであり、記述的モデルは「このようになっている」ことを説明するモデルである。

 意思決定についての典型的な規範的モデルは、次のようなものである。

 まず、問題を認識し、問題を解決できるありうるべき選択肢を挙げ、それらの選択肢を期待効用に基づいて評価し、最も高い評価を得たものを選択する。よりよい意思決定を行うためにはこのようなプロセスを丁寧に踏むべきであるとされているがゆえに、規範的モデルと呼ばれる。