以上の4つの要素を使って先に挙げた規範的モデルの流れを確認しよう。「問題」が認識され、その解決に貢献できる「参加者」が集められて「選択機会」が形成され、その場で問題に対する「解」が創出されていれば、規範的モデルの流れに沿っているといえる。
これにほぼ対応するように、会議などで問題の提示から解の創出へと秩序だった順序で物事が解決に進むことも多くみられる。
こうしたケースについては、選択機会に問題・解が流れ込み、そこに参加者のエネルギーが投入されることで、問題に対して解が結びつくという問題解決型決定がなされたと、ゴミ箱モデルでは捉える。
それに対して、環境のあいまい性が高い場合、選択機会・参加者・問題・解が、そのような秩序だった順序でつながらないことがある。選択機会をゴミ箱に喩えているのは、無秩序に色々なものが1か所に集められることを想起させるためである。
たとえば、定例の会議(選択機会)のタイミングが悪かったりすると、その時点では問題がさほど顕在化しておらず、それが会議で扱われず見過ごされてしまうことがある。ゴミ箱モデルでは、こうしたケースを「見過ごし」と称する。
また、問題があまりに大きすぎたり、負荷がかかるものである場合、参加者のエネルギーが不足しているためにその会議の場でやり過ごされてしまい、そのうち他のプロジェクト(選択機会)でその問題を扱われるようになるといったことがあるかもしれない。これは、「やり過ごし」とゴミ箱モデルでは呼ばれる。
上司の指示があいまいな場合は
「やり過ごす」が合理的なことも
著者らのシミュレーションによれば、問題解決型決定よりも、問題の「見過ごし」や「やり過ごし」のほうが多いとされている。
組織の現場でも、さまざまな案件が扱われるプロセスを細かく追っていけば、問題解決型の決定のみによって処理されているわけではなく、意外に「見過ごし」や「やり過ごし」が生じているのではないだろうか。