
【ベルリン】世界のテクノロジー革命は欧州を置き去りにしている。
欧州にはグーグル、アマゾン、メタといった米ハイテク大手に匹敵する企業が存在しない。米アップルの時価総額はドイツの株式市場全体を上回る。欧州が主要ハイテク企業を継続的に生み出せないことは大きな課題とされ、域内経済が停滞している主な理由にもなっている。米国が課す高関税の影響で経済成長はさらに抑制される恐れがあり、問題の緊急性は高まっている。
テクノロジー分野の成長を妨げている根深い要因として投資家や起業家が挙げるのは、臆病でリスク回避に走りがちな企業文化、厳格な労働法、過剰な規制、小規模にとどまるベンチャー投資の規模、経済・人口の低成長などだ。
ドイツのテック起業家、トーマス・オーデンバルト氏は昨年1月、米カリフォルニア州のシリコンバレーを離れ、ドイツのハイデルベルクを拠点とする新興企業のアレフ・アルファに加わった。同社の目標は、人工知能(AI)分野で先頭を走る米オープンAIと互角に戦うことだった。
オーデンバルト氏はカリフォルニアで約30年間働いていたが、米国企業と競争できる欧州ハイテク大手の成長を後押ししたいと考えていた。ところがドイツに渡って目にしたものに衝撃を受けた。同僚たちはエンジニアリングのスキルが不足していた。同氏のチームのメンバーは誰もストックオプションを与えられておらず、成功へのインセンティブが低かった。何もかもスピードが遅かった。