「口を開けば会社の愚痴ばかり」「なぜか毎年人が辞めていく」「職場での雑談がない」
具体的な問題があるわけではないけれどなぜか居心地が悪く、モヤモヤする職場になっていないだろうか。そんな悩みにおすすめなのが、組織開発というアプローチだ。『いちばんやさしい「組織開発」のはじめ方』(中村和彦監修・解説、早瀬信、高橋妙子、瀬山暁夫著)では、職場のモヤモヤに効く組織開発のはじめ方を成功事例とともに紹介している。本記事では、職場にありがちな悩みについて、組織開発の専門家がお答えする。(取材・文 間杉俊彦、企画 ダイヤモンド社書籍編集局)

「それ意味あるの?」若手管理職に冷や水を浴びせるベテラン平社員。その意外な本音とは?Photo: Adobe Stock

Q:組織改革を進めたいのに、ベテラン社員の抵抗が強い

 チームのモチベーションを高めようと思い、月に一回全員出社してコミュニケーションの機会をつくることにしました。しかし、ベテラン社員からの「意味あるの?」とでも言いたげなまなざし…。正直きついです。

A:職場における「権威」は組織における「権力」と一致しない

 管理職ではなくても、社歴が長く、若手からの信頼も厚いベテラン社員は、組織の中で独特の影響力を持っています。彼らが新しい取り組みに抵抗すると、その姿を見た周囲が「また始まった…」と戦々恐々とする光景はよく見られます。

 管理職には「権力」がありますが、ベテラン社員には「権威」がある組織開発の現場では必ず「権威」と「権力」の問題が浮上します。

 特に現代の企業では、ある程度の年齢になっても役職がない社員も増えています。ここに「権威」と「権力」のねじれが発生するのです。その中で若手社員や若手マネジャーが変革を試みると、場合によっては「権威」であるベテラン社員からの抵抗に遭うことになります。

 ですが、この状況を利用し、適切に「権威」を活用することで状況を進展させることも可能です。

 若手の管理職である自身に「権威」が不足していると感じるなら、社外のコンサルタントなど第三者の力を借りるか、または「会社の施策」として位置づけることで、個人対個人の力関係から組織的な取り組みへとフレーミングを変えることができます。

構えすぎる若手管理職

 ですが、そもそもベテラン社員は本当に管理職が推し進めようとしている施策に抵抗しているのでしょうか。

 組織開発コンサルタントとして数々の企業を見てきた中で管理職からよく聞く声として、「ベテラン社員に対して構えすぎていた」という反省があります。

「この人は必ず抵抗するだろう」という先入観を持って接していたが、ありのままの気持ちで誠実に対話してみると、案外すんなりと理解を示してくれたというケースは少なくありません。

 新しい取り組みを始める際に抵抗が生じるのは自然なことです。一度や二度の抵抗で諦めるのではなく、継続的に取り組む姿勢こそが、徐々に組織の文化を変えていく力となります。

 最初は強く抵抗していたベテラン社員が、ある日突然「こういう時間って大事ですね」と態度を変えることもよくあります。そこからは逆に最も協力的な存在になり、その人の影響力によってチーム全体の雰囲気がダイナミックに変わることも少なくありません。

 自分なりの言葉で、なぜその取り組みが必要なのかを誠実に伝える姿勢こそ、「意味あるの?」という疑問を「これは大切だね」という共感に変えるのです。

■参考記事:45歳以上のミドル人材が見捨てる「ざんねんな会社」の特徴とは?

(本記事は、『いちばんやさしい「組織開発」のはじめ方』の著者によるオリジナルコンテンツです)