このような混乱を抱えた猫さんに対しては、「気持ちのリセットをお手伝いする」のが効果的です。ここでは診療でも使う「拮抗条件づけ」という手法を使いました。
これは記憶のメカニズムを使って、行動を修正していく方法のひとつです。この場合は、おやつを使って猫さんの「怖い」などの不快な感情とは拮抗する(相反する)「嬉しい」という感情を引き出すことができます。そうすることで猫さんは気持ちを切り替えることができるのです。

ポイントは猫さんをよく観察して、襲われる前に猫さんの大好物をあげること。猫さんが興奮状態になったら、その興奮が収まるまで、大好きなおやつをくり返しあげましょう。
「わんこそば」ならぬ「わんこおやつ」状態で、落ち着くまで何度もあげてください。猫さんもおいしいおやつを何度も口に運ぶことで、次第に「あれ、なんだっけ?」と心が落ち着いていきます。
このときにあげるおやつは、大好物であればあるほど効果を発揮します!頻繁にあげているとありがたみがなくなってしまうので、ここぞというときにあげる、とっておきのおやつを用意しておきましょう。ペースト状のおやつだと噛まれる心配があるので、カリカリタイプのほうがあげやすいと思います。
なお、レアケースですが、人間が大怪我をするくらい激しい攻撃行動をする猫さんがいます。そこまで通常では考えられない行動をするということは、脳のブレーキがかかりづらくなっている可能性があります。
この場合は、投薬による治療が必要になる場合があります。過度に襲ってくるなら、早めに病院の先生に相談したほうがよいでしょう。