仕事を「きっちりこなす人」ほどAIに仕事を奪われる。じゃあ、生き残る人の意外な共通点って？

「手に職をつけて、自分の力で食っていく」。そんなキャリア観が、AIの登場によって根底から揺らいでいる。あらゆる業務が一瞬で完了でき、誰もがコンテンツを無尽蔵に生み出せるようになった時代に、私たち人間はキャリアにおいてどのような生存戦略をとるべきなのだろうか。
AIを「思考や発想」に活用するための書籍『AIを使って考えるための全技術』の発売を記念して、起業家であり、「やりたいことが見つからない人」に向けてキャリア設計を説いた書籍『物語思考』の著者でもあるけんすう（古川健介）さんに「AI時代のキャリア戦略」について話を聞いた（ダイヤモンド社書籍編集局）。

AI時代に「真っ先に切られる人」

――AI時代におけるキャリア観をどう考えていますか？

　コロナ禍くらいまでは転職ブームでしたよね。「大企業で出世しても意味ない」っていう空気が強かった。でもこれからは逆に、大企業や既存の産業で働いている人のほうが強くなると思っています。

　反対に、個人事業主やフリーランスはかなり危険度が高くなっている。要因としては、やっぱりAIです。実際、AIに仕事を代替されて真っ先に切られているのが、個人事業主やフリーランスです。翻訳、イラスト、デザイン、フォトグラファー……こうした分野で明らかに仕事が減ってきている。

　たとえば僕たちがメディアと組んで記事をつくるときでも、もう対談音声をそのままGeminiとかのAIに入れて文字起こしして、対談風の記事にしてもらいます。それで5分くらいで原稿ができて、人が軽く手直ししても20分で1本の記事が完成します。

　以前だったら、わざわざ会議室に集まって、ライターやカメラマン、取材補助の人がいて、お茶を出す人がいたりしてっていう“人員”が必要だったのが、今はそれが全部カットされている。

　だからこれからは「外注」自体が減っていって、AIを使った「内製化」がめちゃくちゃ増える。というか、もうかなり増えてると思います。

個人のスキルや価値観よりも「大事なこと」とは？

――では、これからの時代でも必要とされるには何が必要なんでしょう？

　そうですね。よく、その人だけが持ってる「課題意識」や「独自の問題意識」が大事だって言われますけど、正直、それもAIでかなり代替できるようになると思います。

「こういう人にインタビューしたいけど、質問のいい切り口は？」ってAIに聞けば、それなりに優秀な案が出てきますから。そこからさらにAIとディスカッションしていけば、けっこうなレベルの内容になります。

　だから僕は、これからの時代で生き残るにはシンプルに「好かれてるかどうか」が最重要だと思っています。

　幻冬舎の社長・見城徹さんがよく「癒着が大事」って言ってますけど、結局、信頼関係で仕事が決まる時代になっているんですよ。

　今日だって、ダイヤモンド社さんからオファーいただいたからこうして取材に応じてるけど、知らない人やメディアから突然来たら、やっぱりちょっと構えますよね（笑）。

「強い人」よりも「好かれるキャラ」が生き残る

「人間関係は苦手だけど、仕事はちゃんとやってきました」という、きっちりかっちり働くタイプの人から仕事を失っていく時代なんですよね。そういう人は、大企業に入って組織の中で評価される方にシフトしないとかなりキツいと思います。

　そして「個の時代だ！」「自分の力で稼げるようになろう！」って煽られて行動してきた人ほど、AI時代では苦しくなってくる。そういうフリーランスや個人事業主こそ、「人脈づくり」「仲良くなる力」みたいなアナログなスキルが大事になります。「好かれるキャラ」に切り替えていかないと、生き残るのが難しい。

　だから、これからは“自分の力”じゃなく、“誰とつながっているか”がすべてになる。そういう時代なんじゃないかなと強く感じています。

　それが“良いこと”だとは思ってませんけど、生存戦略としては、もうそうするしかないと思います。

（本稿は、書籍『AIを使って考えるための全技術』に関連したインタビュー記事です）