どうすればお金をかけずに、売上や利益をもっと増やせるのか? この切実なお悩みに答えるのが、人気の販促コンサルタント・岡本達彦氏の最新刊客単価アップ大事典 「つい買ってしまう」販促の仕掛け75』(ダイヤモンド社刊)です。同書は、「行動経済学×現場目線」で「つい買いたくなる」販促の仕掛けとは何かを言語化した初の書。本書が提示するのは、「お客様の購買行動そのものを変える設計とは?」です。どうすれば、「利益が残る経営」へと変われるのか? 本連載では、『客単価アップ大事典』に収録しきれなかった事例の中から、現場ですぐに導入でき、成果につながりやすい客単価アップの仕掛けを厳選してご紹介していきます。

なぜ「全10種類」と番号が振られていると、特に欲しくなかったものまで揃えたくなってしまうのか?Photo: Adobe Stock

「空席」があることが、最大のストレスになる

 シリーズものの漫画の背表紙。1巻から9巻まで並んでいるのに、なぜか「5巻」だけが欠けている…。その隙間を見た瞬間、猛烈にソワソワして、すぐにでも本屋へ走りたくなったことはありませんか?

 人間の知覚には、不完全なものを完全な形に補完しようとする「閉合(クロージャー)」という傾向があります(ゲシュタルト心理学)。欠けたピースを埋め、バラバラなものをひとつの秩序にまとめることへの強い衝動は、この知覚特性に根ざしています。

「セットの一部」として商品を定義し、あえて「未完成の状態」を作り出すことは、お客様を自発的な「全種類購入(コンプリート)」へと駆り立てる、強力な販促戦略なのです。

中途半端は忘れられない(ツァイガルニク効果)

 心理学には、完了した事柄よりも、中断されたり未完成だったりする事柄の方が、より強く記憶に残るという「ツァイガルニク効果」があります。

 商品に「No.1」「No.2」と番号を振ったり、スタンプカードの空枠を見せたりすることは、お客様の脳内に「未解決の課題」を意識させているのと同じです。

 脳はこの「中途半端さ」を解消するために、欠けているピース(商品)を手に入れようと、あなたの店へ何度も足を運ぶようになるのです。

収集が「目標」に変わる(セットの魔力)

 もう一つの狙いは、単なる「モノ」を「コレクション」へと昇華させることです。

 バラバラの10個の商品を買うのは浪費に感じますが、「全10種のセットを完成させる」という目的があれば、それは「達成すべき目標」へと変わります。

 全部揃った瞬間の「完成した状態」を想像させることで、お客様は1つ買うごとに「あと一息だ」と自分を鼓舞し、購入点数を自ら引き上げていくのです。

他の現場でも使える「コンプリート」の設計

「揃えたい」という欲求は、物理的な商品以外でも刺激できます。

 ・飲食店・カフェ:期間限定メニューに「春・夏・秋・冬」の季節名を冠する。「四季を制覇したい」という完結欲求が、年4回の来店を促します

 ・ECサイト・教育講座:全12回のカリキュラムに「ステップ1~12」と番号を振る。マイページに「達成率60%」というプログレスバー(進捗状況)を表示するだけで、脱落率を下げられます

 ・アパレル・雑貨:同じデザインで「7色のカラーバリエーション」を用意する。「その日の気分で使い分ける」という提案をしつつ、全色並んだ時の美しさをディスプレイで強調し、「複数買い」を誘発します

まとめ

「コンプリート」を意識させるのは、

 ・「ゲシュタルトの閉合原理を刺激し、未完成の状態を『解消したい課題』に変える

 ・「ツァイガルニク効果」を利用し、次の購入までお客様の頭から商品が離れないようにする

 ・ゴールに近づくほど購入意欲が高まる心理を活用する

 という、お客様の「集めたい」という衝動を、継続的な売上へと変換するための販促戦略なのです。

岡本達彦(おかもと・たつひこ)
販促コンサルタント
現場目線ですぐ使えるマーケティングを伝える第一人者。
広告制作会社時代に100億円を超える販促展開を見て培った成功体験をベースに、むずかしいマーケティングや心理学を使わず、
アンケートやマンダラ等を活用して、誰でも売れる広告を作れる手法を体系化する。
業界を問わず即効性が高く、お金をかけずに売上を上げられることから、全国の商工会議所・経済団体などからセミナー依頼が殺到する。
初の著書『「A4」1枚アンケートで利益を5倍にする方法』(ダイヤモンド社)は、Amazon上陸15年、「売れたビジネス書」50冊にランクインする。
他の著書に、『お客様に聞くだけで「売れない」が「売れる」に変わるたった1つの質問』
『あらゆる販促を成功させる「A4」1枚アンケート実践バイブル』
『「A4」1枚チラシで今すぐ売上をあげるすごい方法』『「マンダラ広告作成法」で売れるコピー・広告が1時間でつくれる!』(以上、ダイヤモンド社)等がある。