プレゼン上手が例外なく使いこなしている技術がある。話題の書籍『対話するプレゼン』の著者、岩下宏一氏は、「「動」だけがプレゼン効果を向上させるものではない」と言います。本記事では、プレゼンの場を「一方的に説明する場」から「対話の場」に変えることを提案した『対話するプレゼン』より、本文の一部を抜粋・加筆・再編集してお届けします。

「間」を制するものがプレゼンを制する
プレゼン上手な人たちが、例外なく使いこなしている技術があります。
“話がうまい人”が無意識に使っている魔法の時間――それが「間(ま)」です。
「間」の効果をイメージしてもらうために、ちょっとだけ、たとえ話をします。
映画を想像してみてください。
クライマックスのアクションシーンでは、次々とシーンが切り替わり、息をつく暇もありません。
しかし、事件が解決したあとはどうでしょうか?
たいてい、テンポがゆっくりとしたものに変わりますよね。
エピローグ(結末部分)に入る際には、まず広い草原などの静かな風景が映し出され、カメラがゆっくりと流れていきます。
次に主人公の家が見えてきて、そこから家の中へと場面が切り替わっていく。
こうした「緩急」をつけることで、ストーリーの変わり目の大きさが視覚的にも感覚的にも伝わります。
「ここが大きな節目ですよ!」ということを示しているわけです。
プレゼンにおいても、切り替わりの大きさに合わせて間の長さを変えることが重要です。
間の長さは話している内容の切り替わりの大きさと比例しています。
大きな切り替わりの場面ほど、大きく間をとるべきなのです。
例えば資料やスライドを使って説明している時には、ページをめくる時間も、切り替わりの大きさに応じた間になります。
また、ボリュームの大きい資料では、中扉が1枚挟まれることで、さらに切り替わりの大きさを示す役割を果たします。
充分な間をとりながら話を進めると、伝わる度合いがそれまでと比べて大きく向上します。
話がうまい方を観察してみると、例外なく巧みに間を使っていることがわかるでしょう。
間をとっているあいだ、何をしたらいい?
ところで、自分が話しの間をとっている間に何をすれば良いのか、というのはよく聞かれる質問です。
笑顔を浮かべながら相手の表情や様子を受けとめることです。
この時間は、相手にとっても重要な時間です。
もし相手が何か言いたげな様子を見せたら、質問がないかを確認してみましょう。
一方で、自分の意図しない間ができたりすることもあるでしょう。
例えば、うっかり言葉に詰まった時、です。
そういう時は焦って「なんでもいいから話そう」と無理をしないことが大切です。
まずは「少し考えを整理させてください」と相手にひと言伝えましょう。
そのうえで、自分の言葉が自然に出るまで、ゆっくりと考える時間をとってください。
この時、つい目をそらしてしまいがちですが、あえて相手を見てみるのです。
視線を向けた相手に対して自然と言葉を語りかけたくなる感覚が生まれ、結果としてスムーズに話し始めることができるはずです。
相手はその間、必ず待ってくれます。
あなたが次に何を言おうとしているのかを整理していることは、相手にも伝わるものです。
だからこそ、相手を信じて、この間を大切にしましょう。
間は罪悪ではありません。
それは、考えを整理したり、話の流れを切り替えたり、心の中を見つめ直したりする貴重な時間です。
そして時には、ふっと何かがひらめく瞬間をもたらしてくれる、まさに「宝物」の時間なのです。