話題性だけで株を買うのはNG!“期待先行株”で失敗するワケ
最速でお金を増やすなら「小型株を1つだけ」がいい。少額から始める個人投資家にとって、おすすめの投資は「FX(外国為替証拠金取引)」でも「仮想通貨」でも「投資信託」でもない。「小型株集中投資」が、いちばんのオススメなのだ。大学時代にアルバイトで貯めたタネ銭で投資を始めて、就職してから大きな資産を築き、1銘柄だけで利益1億円をゲット。そんな夢物語のような話を現実のものにした個人投資家・遠藤洋氏。自らの経験と再現性のあるノウハウを凝縮した著書『10万円から始める! 小型株集中投資で1億円』(ダイヤモンド社)は、「小型株×集中投資」という一般的には“リスクが高い”とされる手法が、実は堅実な投資であることを教えてくれる。シンプルかつ徹底したルールをわかりやすく解説しつつ、「銘柄選びの視点」「売買のタイミング」「メンタル管理」に至るまで、実践的で本質的な内容がぎっしり詰まる。守りに入るだけでは、思ったように資産は増えない――攻めの投資で、比較的短期間でお金の不安を解消したい人に向けて、経営者、上場企業役員、医師、弁護士、ビジネスパーソンなど、数多くの個人投資家を指導し「勝てる投資家」を数多く輩出してきた敏腕投資家が徹底指南する。続編となる『小型株集中投資で1億円【実践バイブル】』では、さらに踏み込んだ実践的投資法を手とり足とり指南している。

期待だけで上がる株の代表例「ブランジスタ事件」
期待だけで上がる株の具体例として、私が実際に投資した東証マザーズ(現・東証グロース)「ブランジスタ」(6176)の値動きをみていきます。
当時の株価チャートをみると、2ヵ月ほどであっという間に株価が10倍になり、その後、2ヵ月ほどであっという間に株価が10分の1に下がったことがわかります。これが投資家の期待だけで買われた株の典型的な値動きです。
なぜ株価は急騰したのか?
そもそも、なぜブランジスタの株価が急騰したのか?
簡単に説明すると、「作詞家の秋元康氏を総合プロデューサーに迎えて、アイドルグループ『AKB48』に関連したゲーム『神の手』をリリースします」と発表したことをきっかけに、投資家の期待が急上昇したのです。
株価が急上昇した2016年、音楽情報会社「オリコン」の年間シングルランキングで、AKB48はトップ4を独占する人気絶頂ぶりでした(2017年もAKB48は年間シングルランキングでトップ4を独占しました)。
秋元康氏の知名度の高さも手伝い、具体的なゲームの内容が発表される前にもかかわらず期待値がグングン高まり、あっという間に株価10倍に急騰したのです。
期待崩壊と株価の大暴落
ところが、その後、具体的なゲームの内容が発表されると、わずか1週間で株価が半減。
ゲームが公開された直後は、株価が乱高下するも、公開2ヵ月後の株価はピーク時の10分の1になるという“ブランジスタ事件”が生まれたのでした。
この経緯を次にコンパクトにまとめてみました。
「神の手」リリースまでの時系列
2015年10月27日
ブランジスタが全額出資子会社「ブランジスタゲーム」を設立し、スマホ向けゲームを開発。作詞家の秋元康氏を総合プロデューサーに迎え、アイドルグループ「AKB48」に関連したゲームをリリースすると発表
2015年11月10日
ブランジスタゲームが、「ゲームの名称は『神の手』。オタク市場をターゲットに秋元康氏を総合プロデューサーに迎え、これまでにない斬新なオンライン・スマホゲームを軸に広範囲なサービス展開を予定」という主旨のリリースを発表
2015年12月8日
「ブランジスタゲームに対するQ&A 25問」を発表(以下、抜粋)
「コンテンツが素晴らしく面白いのです。まさに『神の手』です」
「3兆円規模ですからね」
「このゲームは、特別です」
「『神の手』は、これまでのゲームのように攻略したから、飽きたからといって終わりがあるものではありません。エンドレスに続けられるゲームです」
2016年4月25日❶
「神の手」の全貌を5月27日にリリース予定と発表
2016年5月27日❷
秋元康氏を迎えて制作した、スマートフォン用オンラインクレーンゲーム『神の手』の事前登録を開始。サービス開始予定日は、AKB48の選抜総選挙当日となる6月18日。
収益イメージ例:年間売上高1200億円
2016年6月18日❸
「神の手」リリース
2018年12月19日
「神の手」サービス終了
期待先行の株は“ハイリスク・ハイボラ”
期待だけで株価が上昇する銘柄は、数日から数週間という短期で株価が数倍に急騰する反面、少しでも期待が外れると真っ逆さまに株価が急落していきます。
このようなゲーム銘柄のほかにも、バイオベンチャー、IT(ネット)企業、有名投資家が買い集めている銘柄なども、似たような値動きをしやすい傾向がありますから要注意です。
投資判断は“実績”が出るまで冷静に
共通するのは商品・サービスの販売実績や業績が現れる前に、投資家の期待だけで株価が上がって、その期待が崩れると同時に株価も暴落するという点です。
株価チャートのモニター画面にはりついて、こまめに株価やニュースをチェックできる専業トレーダーであれば、こうした銘柄に手を出してもいいでしょう。
しかし、本業のあるビジネスパーソンが、こうした銘柄に投資をするのは、急落時に対応できないリスクが非常に高いので、あまりおすすめできません。
※本稿は『10万円から始める! 小型株集中投資で1億円』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。