泣きながらカレーを作った夜、健太郎(高橋文哉)が黙っていた“ほんとうの理由”【あんぱん第47回レビュー】

最近の朝ドラでは貴重になった
“調理しながらのセリフ語り”

 嵩(北村匠海)と健太郎(高橋文哉)のカレーを作って食べるシーン。

 帰ってきた次郎(中島歩)とのぶの暗室シーン。

 これらを中心に解説しよう。

 嵩が仕事から下宿に帰ってくると、健太郎が泣きながら玉ねぎを刻んでいた。玉ねぎを鬼のようにザクザク大量に刻みながらセリフを言う高橋文哉。最近、調理しながらセリフを語るシーンが朝ドラで減っていたので、ほんの一瞬ではあったが、筆者は感心した。こういうのがあるだけで生活感が出るからだ。

 健ちゃん泣いてるの?と心配する健太郎に、「玉ねぎが攻撃してくる」と対抗するように激しく包丁をふるう。

 できたカレーを食べながら、仕事の愚痴を語る嵩と健太郎。ふたりの仲の良さが滲む。

「もうよか」と言う健太郎に「もうよか?」と聞くが、「柳井くんは?」と切り返され、嵩は自分語り。

 ひとしきり語ったあと、嵩は「今日、何か変じゃないけんちゃん カレーも辛いし」と再度健太郎にふる。そこでようやく健太郎は本音を語る。

 赤紙が来たと。明日すぐにいったん実家に戻らないといけない。

 玉ねぎを刻みながら泣き、大量の玉ねぎ入りのカレーが辛かったのは、そのせいだったのだ。

 玉ねぎの攻撃に懸命に対抗しながら、戦争に行きたくなくて健太郎は泣いていたのだろう。

 真意を知らなかったけれどカレーの辛さに、健太郎の様子がいつもと違うことに気づく嵩。

 翌日、「また作ってくれよ」と見送る。

 嵩はいつも未来を見ている。戦争から健太郎が帰ってきてカレーをまた一緒に食べるビジョンを見ているのだ。

 自分語りもしながら、ちゃんと相手の話も聞こうとするところや、カレーに未来の希望を託すところなど、嵩の人柄が出ていた。

 このシークエンスの脚本は、カレーと玉ねぎを使ってとてもよくできていたが、ムードメーカーだった健太郎が出征してしまうのは悲しい。寛(竹野内豊)、屋村と感じのいい人ばかり去っていく。

 次郎も感じがいい人のひとりなので心配だ。が、次郎はふいに戻って来た。