たとえば営業であれば、クレームが多く、ウマが合う営業スタッフでないとこじらせてしまうような顧客。内勤であれば、七面倒くさい処理が必要だったり、めったに使わないような知識・技能を要するタスクを指します。こういう「厄介な仕事」は多々ありますから、何でもかんでも全部引き受けるわけではありません。

 そうではなくて、「あるタイプの顧客」「あるタイプの特殊タスク」に通じ、自分の得意としておくのです。

書影『静かな退職という働き方』(PHP研究所)『静かな退職という働き方』(PHP研究所)
海老原嗣生 著

 これは、所属する部署の中で、自分の存在価値を著しく高めることにつながるだけでなく、自分のペースで仕事をすることができるようになります。「厄介な仕事」は、他者から敬遠されるから、自分だけの聖域となり、業務プロセスをブラックボックス化させることが可能だからです。

 そうした難しい顧客なら、頻繁に訪問することも「しょうがない」と周囲は見てくれるでしょうし、その顧客には関わりたくないから、他者が相手先に連絡を入れることもまずありません。だから、直行・直帰をして時間を効率的に使うこともできるでしょう。

 内勤も同様で、「君、あの仕事はどうなってるの」と言われても、「もう少し時間がかかります」と言えば詮索はされにくいし、「今、あの仕事で手一杯なので」と他業務を断ることも可能になる。

 クレーマーや厄介業務は、まさに「蜜の味」と言えるでしょう。そして、こうした「厄介な仕事」が、Wワークや退職後の小遣い稼ぎなどでも役に立つことがあります。「1粒で何度も美味しい」ということを心してください。