海外のビジネスマン写真はイメージです Photo:PIXTA

昨今、会社を辞めるつもりはないものの、出世を目指してがむしゃらに働きはせず、最低限やるべき業務をやる「静かな退職」という働き方が浸透しつつある。特に欧米では、「静かな退職」こそ標準という現実があるというが——?日本と欧米、双方の働き方をみていこう。※本稿は、海老原嗣生『静かな退職という働き方』(PHP研究所)の一部を抜粋・編集したものです。

欧米では7~8割の労働者が
手抜きして当然と考えている

 アメリカの調査会社「ギャラップ」が2022~2023年に行った調査「2023 State of the Global Workplace」によると、世界では平均59%の労働者が「静かな退職者」(編集部注/会社を辞めるつもりはないものの、出世を目指してがむしゃらに働きはせず、最低限やるべき業務をやる社員)に該当すると言います。

 私はこの数字を見て、「ずいぶん低い」と感じました。欧米に関して言えば、7~8割の従業員が「静かな退職者」にあたると考えていたからです。

 たぶん、彼らはそんな手抜き仕事を真っ当と考えており、だからこそ「自分は『静かな退職』なんて不埒な働き方なんてしていない」と、数字が下振れしていると私は思っています。

 なぜ、そんなふうに思うのか。まあ、日本とイギリスの労働者を比較した以下の文章を読んでください。

日本と欧州の働き方の違いは
歴史や社会システムに由来する

■リバプールの工場

 遅刻と欠勤の増加に対して、我々は大いに憂慮しており、事態はもはや放置できない段階に達している。普段の日で遅刻者は1600人を下らないし、さらに、従業員の10%が何等かの理由で欠勤している。(中略)

 今後は、遅刻のつづく者、もしくははっきりした理由もなく欠勤する者に対しては、極めて厳しい処置をとる。

 月に遅刻6回か、ちゃんとした理由のない欠勤が3回あると、出勤常ならざる者とみなされ、職場委員会の立ち会いのもとで口頭による警告が与えられる。(それでも同様に繰り返した場合)次の段階になると、上級職場委員会の立ち会いのもとで、警告の文書が手渡される。それでもダメなら解雇ということになる。
※この処置により、5カ月間で5.3%の従業員が解雇されている。