さらに「雨漏り」は中古住宅だけの問題ではない。実は、新築の段階ですでに雨漏りのリスクを抱えているケースも少なくはないからだ。さくら事務所が実施している新築工事の施工品質検査においても、外壁の防水工事で何らかの施工不良が見つかるケースは、残念ながら一定の割合で存在する。つまり「雨漏りリスク」は、建物の新旧に関わらず、認識すべき問題として捉えておかなければならない。

わが家を雨漏りから守るために
「今」できる3つのこと

 大切な資産である住まいを雨漏りから守るには、日々の地道な取り組みがかぎとなる。具体的には、定期的な点検と適切なメンテナンス、そして何よりも異常の早期発見と迅速な対処が肝心だ。そこで、まずは雨漏りリスクを早期に見つけるために、比較的容易に確認できるチェックポイントを3つご紹介する。

 1つ目は、建物の外周、特に屋根や外壁といった部分である。ご自宅から少し離れて全体を眺め、ひび割れや部材のズレ、塗装の剥がれなどがないか、じっくりと観察してみよう。

 2つ目はバルコニーやベランダ。特に床面の防水層に浮きや亀裂がないか、そしてその裏側にあたる軒天(のきてん)などに染みやカビ、塗装剥がれがないか確認することが肝要だ。ここからの浸水は階下に影響することもある。

 3つ目は、室内の壁や天井、中でも屋外に面した壁や窓枠の周辺である。雨漏りは必ずしも天井からポタポタと水が落ちてくるケースばかりではない。壁紙の浮きや染み、カビ臭さ、窓枠周りの木部の変色なども、雨水が浸入している可能性を示す重要なサインとなり得る。特に、普段は家具の裏などに隠れて見えにくい壁も、折を見て状態をチェックするよう心がけたい。

 ただ、セルフチェックでは判断が難しく、見えない部分で問題が進行していることも多い。例えば、ごく初期の微妙な雨染みが何を意味しているのか、屋根裏のような高所や狭所の詳細な状態、さらには壁の内部といった目視できない箇所の雨漏りの有無(専用のサーモグラフィーカメラなどで調査する場合もある)などは、やはり専門的な知識と経験を持つホームインスペクター(住宅診断士)に診断を依頼することをおすすめする。

 どのような住まいも、時と共に変化し、手入れが不可欠となる。そして雨漏りは、単に生活上の不便というだけでなく、放置すれば大切な資産である住まいの価値を静かに、しかし、確実に損なっていく、まさに住まいのSOSといえるものだ。今回解説したリスク要因や見えない進行可能性を念頭に、定期点検とメンテナンスを怠らず、異常発見時は速やかに専門家へ相談・早期対処することが資産を守る確かな一歩となる。雨期を迎える今こそ、住まいの状態に目を向け、備えを考える好機としたい。

(株式会社さくら事務所創業者・会長 長嶋 修)

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