私的旅行とはいえ、秋篠宮ご夫妻は天皇陵も参拝した日程だったが、ご夫妻と私たち4人は、午後5時半頃から約1時間、懇談した。秋篠宮さまはグレーのダブルのスーツにえんじのネクタイ姿。紀子さまは濃紺のスーツで左胸にブローチが飾られていた、と記してある。私は、宮さまに結婚後の生活についていくつか話しかけた。

 私の問いかけに秋篠宮さまは、「結婚して変わったことですか?一番、変わったことは酒量がだいぶ減ったことですかね」などと答えた。

 そんな様子の秋篠宮さまに、紀子さまも「お酒とタバコに気をつけてくださいね」と微笑みながら宮さまに話した。宮さまは初対面の私たちに、飾ることなく素直に近況を語ってくれた。

世間のやんちゃなイメージと真逆な
「繊細で物静か」な印象

 秋篠宮さまは現在もスリムだが、当時は、今よりももっとやせた感じだった。右腕に金色のブレスレットをしていた。「やんちゃな次男坊」というイメージが喧伝(けんでん)されていただけに、私は、繊細で物静かな第一印象に驚いた。

 と同時に、話しぶりから上皇ご夫妻(当時の天皇、皇后両陛下)や兄や妹、それに自分の置かれた環境に対してよい意味で少し距離をとって見ているのでは、との印象も強くあわせ持った。

 距離を置くというのは、置かれた立場から逃げているとか、関心を持たないということではない。皇族としての自分を冷静かつ、客観的に見つめている大人びた姿勢を、宮さまは持っていた、ということを意味する。こうしたことを直接、対話をしてみて私は素直に感じたのである。

 初対面にもかかわらず、「少し失礼かな……」と思いながらも私は最後に、子どもの予定を尋ねてみた。しかし、やんわりはぐらかされてしまった。秋篠宮さまと会い、ほんわかと温かい心地になった私たちは、老舗旅館をあとにしたのだった。

自分たち一家を「特別な存在」
として見せたくない秋篠宮さま

 先ほど、私が初対面の宮さまへの印象として、「皇族としての自分を冷静かつ、客観的に見つめている大人びた姿勢を、宮さまは持っていた」と記したが、もう1つエピソードを加えておこう。