この手紙はプラハ大学の総長だったマルクス・マルチという人物が、ローマの学者アタナシウス・キルヒャーへ送ったものであると言われています。
ルドルフ2世は、錬金術を特別に庇護したことで有名な皇帝です。
ロジャー・ベーコンは、実験を通じて自然現象の原理を探ろうとした大錬金術師の1人で、「最初の科学者」とも呼ばれています。(ベーコンは自身の哲学、研究成果を記した書物において、後世において顕微鏡、望遠鏡、飛行機や蒸気船が発明されることを予想していたことでも知られている)
もしもこの手稿が本当にベーコンの手によるものであれば、暗号を使ってまで秘匿しようとした英知とは一体何なのでしょうか。
暗号は「コード」か?
「サイファ」か?
ヴォイニッチが手稿を発見して以降、中身に魅せられた多くの人々がこの文字を解読しようと試みました。ここからは、彼らが主張する解読方法を見ていきましょう。
手稿に挑んだ多くの人々はまず、この暗号が「コード」か「サイファ」なのかを考える必要があります。日本語ではいずれも「暗号」と訳されますが、暗号化されている単位が「単語(コード)」か「文字(サイファ)」かという違いがあるのです。
「コード」を解読するためには、単語同士の対応を網羅した「辞書」を見つけることが必要です。一方「サイファ」の場合は、文字同士の置換のための「ルール」を見つけることが求められます。
『ヴォイニッチ手稿』は、初期の頃から多くの人々が「サイファではないか」という予測を立てていました。なぜなら「コード」と呼ぶには、あまりにも単語が複雑で、習得が困難に思われたためです。
このサイファ文の解読に対して、長い間強力な手掛かりとなったのが「頻度解析」という手法です。