意識的に運動をしている人は、食事の栄養バランスにも気をつけていることのあらわれだと想像できますが、これから歩き始めようとしている人にも、栄養バランスのとれた食事をしてほしいと思います。

栄養バランスはとても大事ですが、食べすぎにも注意しましょう。
長寿遺伝子(サーチュイン遺伝子)は、長生き歩き(8000歩/速歩き20分)を2カ月続けることで、スイッチが入るということも述べました(編集部注/本書の前項)。
たんぱく質をとって筋力低下を防止
健康長寿のための食生活とは?
もう1つ、長寿遺伝子は、腹八分にしておくことでも活性化されます。
サルに関する研究では、食事制限をした腹八分のサルは、長寿遺伝子が活性化されたため、食事制限をしなかったサルよりも長生きしました。
高齢者にとって重要な栄養素の1つは、たんぱく質です。長生き歩きをしている高齢者は、食事の栄養バランスがよいといいましたが、この人たちはたんぱく質をしっかりとっています。
前述の血清アルブミンは、たんぱく質の一種なので、たんぱく質を十分にとっている人は、血清アルブミン値が高くなるのです。
たんぱく質は筋肉をつくる材料でもあるので、筋力低下を防ぐためにもしっかりとる必要があります。
たんぱく質を意識的にとることは大事ですが、それ以外の栄養素もバランスよくとりましょう。

ごはんやパンなどの炭水化物を適度にとらないと、歩くためのエネルギーが不足してしまいます。
必須栄養素のビタミンやミネラルは、野菜や果物に多く含まれているので、これらも忘れてはなりません。
そして、骨が弱くならないように、牛乳や小魚などからカルシウムをとることも重要です。
骨の栄養素としてはほかに、納豆に多いビタミンKや、魚介類やキノコ類に多いビタミンDがあります。また、ビタミンDは日光を浴びることで生成され、活性化されます。そのためにも、外を歩くことが大事です。
食べ物では塩分を減らすことも重要です。塩分の多い食生活は、高血圧症の原因となります。調味料では減塩を心がけましょう。
また食事のときは野菜を先に食べると、野菜に豊富な食物繊維が糖分の吸収をゆるやかにして、食後血糖値の急上昇を抑えることができます。
長生き歩きができている人は、それだけで食事のバランスがよくなるという中之条研究のデータもあるので、まず長生き歩きを始めてほしいのですが、食事のことも少し意識するとよいかもしれません。