運動したい、でもできない……。そこで本連載は論文マニアとしても有名な大谷義夫先生(医師)が、82の論文、世界の最新エビデンスをもとに正しく効果的な歩き方を書いた本『1日1万歩を続けなさい』から、今日から役立つ「歩き方のコツ」をお伝えします。ウォーキングは体にいい。それはたしかに事実です。でも実は「ただ歩くだけ」では効果が出にくいことをご存じでしょうか。同じ歩くなら「科学的な歩き方」で「最大効果」を手に入れる。ここを目指してみてください。
「体調管理」がすべて
生きているといろいろなことが起こりますよね。
それを乗り越えるには体調管理が重要なことは言うまでもありません。
運動したい、でもできない
そのためには運動が必要。
でも「運動は体にいい」と頭ではわかっておきながら、忙しくて時間がないとおっしゃる方は多いと思います。
体に効く運動ナンバーワンは?
私は論文マニアなので、このたびさまざまな論文を読んでみたのですが、その結果、ウォーキングが最強の運動であることに気がつきました。
ウォーキングは、風邪(※1)やメタボ(※2)、生活習慣病(※2)のみならず、ストレスや不眠、うつ(※3,4,5)、不安、さらには自律神経に関連した更年期の不調(※6)、認知症の予防(※7,8)や認知機能の改善(※9)といった脳の領域、さらにはがん(※10)や感染症(※11)といった内科の病気にも効果があり、死亡率を下げる(※12)こともわかりました。
これは忙しさで後回しにするにはあまりにも惜しい運動です。
ウォーキングは「アイデア」も生む
その他、中でも私が最も驚いたのは「ウォーキングは創造性を豊かにする」ということです(※13)。
私の小学校時代からの親友も、朝のウォーキングで仕事のアイデアを出せるようになったと言っていますが、ウォーキングを始めれば体や心の不調が改善するのみならず、さまざまなアイデアが頭に浮かび創造性が増すことを実感いただけると確信します。
「ウォーキングは高齢者のもの」というまちがった思い込み
ただそういう私も数年前までは、ウォーキングを軽視していたかもしれません。
高齢者はウォーキングが負荷的にも適切かもしれませんが、私はまだまだフィットネスで泳いで、筋トレすべきと考えていたのです。
暗闇ボクシングにはまったときも激しい運動が快感で、楽しくフィットネスを続けていました。
しかしコロナ禍を契機にウォーキングに変更すると、それ以上に楽しく充実したウォーキングライフが待っていました。
しかも、それまで行っていた糖質制限をやめたにもかかわらず3kg痩せることができたのです。
気楽に始めればそれでいい
論文を読むと1日1万歩で死亡率がおよそ最大に下がることから、ウォーキングは「1日1万歩」を目指していただきたいと思うのですが、まずは「とにかく始める」「できるだけ毎日続ける」をお願いしたいと思います。
休日にはウォーキングシューズを用意して、一気に頑張っていただくのもいいのですが、ウォーキングはできるだけ毎日続けることが大事。
こだわり過ぎも不要です。
私も平日は革靴やサンダル、診療着であるスクラブを着て、「朝2000歩」「昼3000歩」「診療後2000歩」「夕食後4000歩」の細切れウォーキングを続けています。
※本稿は大谷義夫著『1日1万歩を続けなさい』より、一部を抜粋・編集したものです。本書にはウォーキングの効果にまつわるさまざまなエビデンスと、具体的かつ効果的な歩き方が紹介されています。
※1 Nieman DC, et al. The Effects of Moderate Exercise Training on Natural Killer Cells and Acute Upper Respiratory Tract Infections. Int J Sports Med. 1990 Dec;11(6):467-73. doi: 10.1055/s-2007-1024839.
※2 Peddie MC, et al. Breaking prolonged sitting reduces postprandial glycemia in healthy, normal-weight adults: a randomized crossover trial. Am J Clin Nutr. 2013 Aug;98(2):358-66. doi: 10.3945/ajcn.112.051763. Epub 2013 Jun 26.
※3 Ikenouchi-Sugita A, et al. The Effects of a Walking Intervention on Depressive Feelings and Social Adaptation in Healthy Workers. J UOEH 2013; 35: 1-8
※4 1日1万歩のウオーキング~不安・抑うつが改善の可能性. Medical Tribune 2014; 47(8): 10-10.1日1万歩で心も健康に!不安やうつ症状が改善―東京大|あなたの健康百科|Medical Tribune (medical-tribune.co.jp)
※5 Taneichi S, et al. Is the Walking Campaign Effective for Depressive Symptoms? Open Journal of Psychiatry, 2014, 4, 405-409 Published Online October 2014 in SciRes. http://www.scirp.org/journal/ojpsych http://dx.doi.org/10.4236/ojpsych.2014.44047.
※6 Brown WJ, et al. Prospective study of physical activity and depressive symptoms in middle-aged women. Am J Prev Med. 2005 Nov;29(4):265-72. doi: 10.1016/j.amepre.2005.06.009.
※7 東京医科歯科大学、千葉大学 報道発表 Press Release No: 260-20-51. 20210310walk.pdf (chiba-u.ac.jp)
※8 Tani Y, et al. Neighborhood Sidewalk Environment and Incidence of Dementia in Older Japanese Adults.Am J Epidemiol. 2021 Jul 1;190(7):1270-1280.doi: 10.1093/aje/kwab043.
※9 Blumenthal JA, et al. Lifestyle and Neurocognition in Older Adults With Cognitive Impairment. Neurology. 2019 Jan 15;92(3):e212-e223. doi: 10.1212/WNL.0000000000006784. Epub 2018 Dec 19.PMID: 30568005.
※10 Moore SC, et al. Association of Leisure-Time Physical Activity With Risk of 26 Types of Cancer in 1.44 Million Adults. JAMA Intern Med. 2016 Jun 1;176(6):816-25. doi:10.1001/jamainternmed.2016.1548.
※11 Sallis R, et al. Physical inactivity is associated with a higher risk for severe COVID-19 outcomes: a study in 48 440 adult patients. Br J Sports Med 2021 Oct;55(19):1099-1105. doi: 10.1136/bjsports-2021-104080. Epub 2021 Apr 13.
※12 Sheehan CM, et al. Associations of Exercise Types with All-Cause Mortality among U.S. Adults. Med Sci Sports Exerc. 2020 Dec;52(12):2554-2562.doi: 10.1249/MSS.0000000000002406.
※13 Oppezzo M, et al. Give Your Ideas Some Legs: The Positive Effect of Walking on Creative Thinking. J Exp Psychol Learn Mem Cogn 2014 Jul;40(4):1142-52. doi: 10.1037/a0036577. Epub 2014 Apr 21.