「事実質問」に変えるとうまくいく
中田:「事実質問」が優れているのは、世界中どこでも、誰を相手でも使えること。アフリカの部落の人でも、アメリカ大統領に対しても、「昨日、何を食べましたか?」「昨日、誰と会いましたか?」などの「事実」を聞くことはできるし、そこに「解釈(思い込み)」が入り込む余地もありません。頭をひねらなくていい、淡々と事実を述べるだけでいい。それもポイントの一つです。「事実質問」は、答える側の心理的ハードルをグンと下げてくれるんです。「どう思った?」とか「これをどう解釈する?」と聞かれると、立派な答えを返さなくてはと構えてしまうけど、「いつ、この資料を手に入れましたか?」という質問には、シンプルに答えられますよね。
佐渡島:それ! 実は僕、かつて何回か言われたことがあるんです。「佐渡島さんに質問されると、試されている気がする」って。これのことだったんだ!(笑)。
中田:まさに「詰問型のなぜ質問」ですね(笑)。こちらはそんな意図はないのに、相手は「試されている」と感じてしまう。
佐渡島:実は、仕事上で「なぜ?」と聞くのは、僕としては意図的だったんです。つまり、質問されるまで口を開かないボスよりも、「あなたに興味がありますよ」と示した方がいいだろうと思って。だから積極的に、「あなたは、どうしてそう感じたの?」と聞いていた。詰問どころか、謙譲の意図です。でも、それが裏目に出ていたかもしれないということですね。
中田:もちろん会話は生き物なので、絶対の正解はありません。「どうして?」と聞かれることで、活性化する対話や議論もあるでしょう。だけどもし、これをお読みの方で、「なぜか自分が話す相手は、いつも言い訳をしてくる」「対話を始めると心を閉ざされる」と感じる人がいたら、質問の仕方を「なぜ?」から「いつ?」に変えてみたほうがいいかもしれません。
(本記事は『「良い質問」を40年磨き続けた対話のプロがたどり着いた「なぜ」と聞かない質問術』に関する対談を編集した特別な記事です)