「玄米と家庭用精米機をセットで販売」のアイデアもあるが……

 楽天グループの三木谷浩史社長は、小泉農水大臣との面会で随意契約参加の意向を示し、自社サイトでの精米機とのセット販売を検討していると発表した。

 精米とは、玄米表面の糠(ぬか)を除去して、玄米を白米へ変える作業だ。この難しさは、精米度合いの微調整にある。胚芽をどの程度残すか、糠をどこまで除去するかの判断が重要で、精米しすぎれば栄養価が低下し、米粒が割れやすくなる。逆に不足すれば糠臭さが残る。一般的には、精米過程で10%が糠として除去される。

 家庭用精米機は業務用に比べ細かな調整が難しく、玄米の品種や状態によって精米後の品質にばらつきが生じる。お米は生鮮食品で個体差がある上、備蓄米は保存年数によっても品質差が大きいであろうことを考えると、家庭用精米機の普及はさすがに難しいのではないだろうか。

 アーリーアダプター(新商品・サービスを早期に受け入れる消費者層、市場の約13.5%を占めるといわれる)は、備蓄米をおいしく食べるために利用するかもしれない。実際、6月に入って家電量販店では急に家庭用精米機の売上が伸びているようだが、広く定着するには至らないだろう。これまで日本で「マイ精米機」が流行した歴史がないことからも明らかだ。

備蓄米の品質評価と今後の展開

 5月29日、小泉農水大臣はメディアを招いて備蓄米の試食会を実施。その後、精米・パック詰めされた備蓄米の販売が始まった。前掲の表の通り、5月末から6月中旬にかけて、大手スーパーやコンビニ、ECサイトなどさまざまな企業が備蓄米の販売を開始した。

 スーパーでは5kgあたり約2100~3600円、コンビニでは1kg当たり約360~400円、2kgで約700~800円と、通常の米より安価な値付けとなっている。

 原稿を執筆している6月9日現在、大手スーパーでは一部店舗で販売を開始したが、備蓄米は店頭に並ぶ量が少なく、出すとすぐに売り切れてしまう状況のようだ。また、ネット通販では5月29日の販売分は即完売になっていた。地域による差もあるが、全国的に見て、備蓄米を購入した人はまだほとんどいない状況といっていい。今後、消費者が実際に購入・炊飯した際の品質評価が、今後の備蓄米政策の成否を決定する重要な要素となるだろう。

 さらにここ数カ月で、スーパーの店頭には輸入米も大量に並ぶようになった。おそらく、小売各社がそれぞれ買い付けているものと思われるが、輸入米は国産銘柄米と備蓄米の中間程度の値付けとなっている。

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 6月10日、小泉農水大臣は令和3年産と令和2年産の備蓄米を20万トン放出すると発表、「5kg当たり1700円程度になるのではないか」とコメントしている。

 これで米の高騰が収まるかどうかはまだわからないが、政府が流通の円滑化のために備蓄米を本格的に放出し始めたことにより、昨年から続く米騒動は次なるステージへ移行したといえそうだ。今回の米騒動は、流通管理の重要性を改めて浮き彫りにした。真の解決には、政府と民間企業が連携したSCMの構築が不可欠だと考えている。