ベックリー 中国があらゆる種類のミサイルの備蓄とランチャーを大幅に増やしたことで、沖縄とグアムの米軍、そして台湾の軍は奇襲攻撃に対して極めて脆弱(ぜいじゃく)になっています。それにもかかわらず、我々はより強靱(きょうじん)な態勢をとるための措置を講じていません。

 もう1つの注目すべき大きな変化は、中国が保有する軍艦の数が急速に増えてきていることです。私が最初に論文を書いたころは、軍民共用のフェリーなど、中国が本当に必要な数の部隊を台湾に輸送できるだけの水陸両用能力をもっているのかどうか、明らかではありませんでした。

 しかしいまは、そうした能力を獲得しているように見える。つまり、大量のミサイルとランチャーによって、米軍と台湾軍が極めて脆弱な状態に置かれ続けていること、さらに台湾海峡を越えて多くの部隊を輸送する水陸両能力という強力な組み合わせが生まれてきています。これは大きな変化であり、台湾海峡における軍事バランスは以前より懸念されます。

圧倒的不利と見られたウクライナが
ロシアの侵攻に抵抗し続ける理由

村野 現在、日本の防衛力整備計画は継戦能力の強化に力を入れています。従来の防衛力整備ではあまり注力されてきませんでしたが、現在の計画では弾薬や燃料備蓄などを増強することが重視されています。

 無論、こうした備蓄施設などの増設には政治的な困難があることも予想されますが、少なくとも予算的な問題が以前よりも改善されているのは前向きに評価できます。

 不当に仕掛けられた戦争で争い続けるには、軍事的な側面だけではなく、政治や国民の意思も重要です。ウクライナ戦争で、世界の人びとにとって驚きだったことの1つは、ウクライナの人びとの継戦意思です。当初は政治指導部を含め、ウクライナがロシアに対してここまで抵抗を続けられると信じていた人はそれほど多くなかったでしょう。

 もちろん、政治指導者や国民の継戦意思は、現実問題として相手とどれだけ有効に戦い続けられるかという軍事的な継戦能力と密接に関わるため、ウクライナの継戦意思を支えているものの1つに、欧米の軍事的後方支援があることは間違いありません。