また、教育の問題もあります。ご存じのように、中国の受験競争は熾烈で、ある程度カネのある富裕層にとって、自分の子どもにそこまでガリ勉をさせなくても、日本人程度の勉強をさせて(日本人には悔しい表現ですが、東京大学と北京大学の世界ランキングの格差を見れば、納得せざるをえません)、できれば世界4カ国くらいに留学させて、外国語に堪能な二世経営者を育てるという夢があるようです。
そのためには、東京のタワマン程度は、彼らの所得から言えば、円安も手伝って割安な住宅なのです。その上、何と言っても日本では土地も建物も私有物であり、国からの借用地でないことも魅力のひとつです。
日本に限らず、中国の潤(ルン)は世界で増加し続け、シンガポールやタイ、米国などにすでに800万人もの富裕層が移民しているようです。日本側の調査でも、移住者(ビザの取得者)に占める中国人の割合が非常に増えているという統計もあります。
「不良中国人」のイメージはもう古い
日本を席巻する富裕層たちの実態
もちろん、アパートを売ったら全部民泊にして、それまでの住民を高額の借家代で追い出して儲ける中国人や、東京湾などで漁業権もないのに勝手に貝類を漁獲しまくったり、売春の集団を管理したりする不良中国人も、まだたくさんいます。そうしたイメージによって、日本国民の多くは中国人を嫌い、中国から移民が増えることを警戒してきたのが、これまでの歴史でした。
しかし、ここにきて大きく様相が変わったことも認識せねばなりません。もはや移民ではなく、定住者に近い形で来日している、日本人より圧倒的に富裕な中国人たちがいるという事実を、知っておくべきでしょう。
私も当初、習近平政権の不安定さや、経済の失敗による政治体制の強権化から逃げているだけで、いずれ共産国家・中国に戻る人たちではないかという疑いを捨てていませんでした。しかし、この本を読んで、「潤日」としてやってくる中国人に対して、新たな気構えが必要なのではないかと思い始めました。
それを決定付けたのは、本書で書かれている全国各所に開設されている中国人専用クラブです。先述のように、これは女性のいるクラブではなく高級社交クラブであり、中国の現体制に不満を抱く富裕層が日本のこうした場所に集っていることについて、大陸で何かが起きる可能性を彼らが嗅ぎ取り、そのために協議する場所を確保しているのではないかという疑いを持つからです。