「なんとしてでも生きて帰りたい」嵩の決意に、八木(妻夫木聡)が答えた“戦地の知恵”とは【あんぱん第55回レビュー】『あんぱん』第55回より 写真提供:NHK

日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月から金曜までチェックし、当日の感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年続けてきた著者による「見なくてもわかる、読んだらもっとドラマが見たくなる」そんな連載です。本日は、第55回(2025年6月13日放送)の「あんぱん」レビューです。(ライター 木俣 冬)

小倉連隊に動員命令
嵩の亡き父・清(二宮和也)が行った中国へ

 千尋(中沢元紀)と哀しい別れをした嵩(北村匠海)。

 小倉連隊に動員命令が下り、中国に行くことになった。そこは亡き父・清(二宮和也)の行った先だった。

 千尋からちょうど嵩に形見の手帖を託されたタイミング。写真も出てきて(第54回)、清に呼ばれているのかもしれない。ちなみに、嵩のモデル・やなせたかしの父は朝日新聞社の記者で中国に行っていたそうだ。

 嵩は出発の前日、みんなの似顔絵を描く。もし戦死しても写真の代わりになると不穏なことを言う人も。そしてみんな飲み会をはじめる。

 部屋の外に出た嵩は、相変わらずひとりぽつんとしている八木(妻夫木聡)に語りかける。

「兵隊って哀しいですね。自分たちがどこに送られるかも教えてもらえないなんて」

 この時点では、嵩たちは行き先を秘密にされていた。

 部屋のなかではどんちゃん騒ぎの声がする。嵩は、明日どこに連れていかれるかもわからない状況でよく騒いでいられるなと思うが、八木は「そうしないと不安に押しつぶされてしまうから、みんな必死に笑って恐怖に打ち勝とうとしている」と理解を示す。

 嵩にとって心を鎮める方法は画を描くことだった。