プレゼン資料は、「読ませるもの」ではありません。“込み入った話”を言葉だけで伝えようとすると、どうしてもまどろっこしい表現になり、非常にわかりにくい説明になりがちです。そんな時に必要なのは、伝えるべき内容の「本質」を、直観的に理解できるように「図解化」する技術。プレゼン資料は「見せるもの」なのです。そこで、累計40万部を突破した『社内プレゼンの資料作成術』シリーズの著者で、ソフトバンク在籍時には孫正義社長に直接プレゼンをして「一発OK」を次々と勝ち取った実績を持つ前田鎌利さんと堀口友恵さんに、プレゼン資料を「図解化」する技術を伝授していただきます(本連載は『プレゼン資料の図解化大全』から抜粋・編集してお届けします)。

【プロの資料】10秒で「なるほど!」と納得されるグラフの4原則写真はイメージです Photo: Adobe Stock

【原則1】「見せたい部分」を大きく目立たせる

 プレゼン資料で「わかりやすいグラフ」をつくるためには、「見せたい部分」「伝えたい核心部分」を、できるだけ大きく目立たせることが大切です。そうすることで、わかりやすいだけではなく、相手の心に響くパワースライドにすることができるのです。

 具体的に見ていきましょう。
 まず、「棒グラフ」です。【図-1】をご覧ください。①のスライドで最も伝えたいことは、「チーム売上が月平均15~20%成長している」ことですが、5ヶ月のグラフを掲載していることから「5ヶ月連続増」というメッセージも重要だと考えられます。

 であれば、「4つの鉄則」に従って修正をするだけではなく、その2点を「強調」するようなデザインを施す必要があります。

 それが、②のスライドです。

【プロの資料】10秒で「なるほど!」と納得されるグラフの4原則

 元のスライドでは、すべての棒グラフの上に数値を入れていますが、最後の棒グラフの数値(最も伝えたい数値)だけ大きいフォントで表示するとともに、「右肩上がりで伸びている」ことを強調するために「太い矢印」を加えました。

 さらに、キーメッセージでは、「5ヶ月連続増」「15.3%」という言葉をひときわ大きなフォントで表示。このように、グラフで伝えたい「数字」を強く打ち出すようにすることを意識してください。「数字」にはインパクトがありますし、説得力もありますから、「数字」を目立たせることでパワースライドにすることができるのです。

【原則2】円グラフは「ワンカラー効果」で印象づける

 次に、「円グラフ」について説明しましょう。
 これも「棒グラフ」と同じく、「4つの鉄則」に従ってシンプルなグラフにしたうえで、「伝えたいこと」を強調するために編集を加えていきます。

【図-2】の①のスライドをご覧ください。これは、自社商品がシェアトップであることを示す円グラフですが、パッと見た瞬間にその意図が伝わりませんね? そこで、②のスライドのように加工します。

【プロの資料】10秒で「なるほど!」と納得されるグラフの4原則

 まず、ご注目いただきたいのが円グラフのカラーです。
 自社の部分だけ青で強調し、それ以外の部分はグレーアウトしています。さらに、この部分を円グラフ本体から切り出して、少しズラすデザインを施しています。こうすると、「自社がシェアトップである」ことが一目でわかるからです。

【原則3】「見せたい数字」は円グラフの外に出す

 また、このワンカラーの部分に「当社48%」というテキストを置くのではなく、キーメッセージとして大きく表示しました。

48%」の部分を円グラフのワンカラーと同じ青で表示すれば、円グラフとキーメッセージが連動して、自社のシェアが「48%」であることが一目でわかります

 そして、「48%」の下に「業界No.1」というキーメッセージを置けば、「シェア48%で業界No.1である」ことが一瞬で把握してもらえるという仕掛けです。

【原則4】「見せたい折れ線」を極太にする

 最後に、「折れ線グラフ」についてご説明します。
【図-3】をご覧ください。これは、競合3社の中でA社の店舗数が近年急激にアップしていることを訴えるスライドです。①はゴチャゴチャしていて、何が言いたいのかわかりにくいですよね。私たちならば、②のように加工します。

【プロの資料】10秒で「なるほど!」と納得されるグラフの4原則

 まず、「4つの鉄則」に従ってシンプルな形にします。「折れ線グラフ」の途中にある数字は不要ですので、最新の数字である「A社 197店」「B社 110店」「C社 95店」を、折れ線の“お尻”に表記すればOK。そして、最も伝えたい「A社 197店」という数字を大きく表示するのです。

 このようにグラフをシンプルにしたうえで、見せたい折れ線を「極太」にします。これが非常に重要です。

 なぜなら、このグラフで最も重要なポイントは、「A社の店舗が急激に増えていることを示す」ことだからです。

 そこで、この折れ線を極太にすることで、見る人にそれを印象づけるわけです。
 そして、キーメッセージで「5年連続 店舗数No.1」と数字を強調すれば、一瞬で「伝えたいこと」を印象づけることができるはずです。

(本稿は、『プレゼン資料の図解化大全』より一部を抜粋・編集したものです)

前田鎌利(まえだ・かまり)
1973年生まれ。ソフトバンクモバイルなどで17年にわたり移動体通信事業に従事。ソフトバンクアカデミア第一期生に選考され、プレゼンテーションにおいて第一位を獲得する。孫正義社長に直接プレゼンして幾多の事業提案を承認されたほか、孫社長のプレゼン資料づくりも数多く担当。2013年12月にソフトバンクを退社、株式会社固を設立して、プレゼンテーションクリエイターとして独立。2000社を超える企業で、プレゼンテーション研修やコンサルティングを実施。ビジネス・プレゼンの第一人者として活躍中。著書に『【完全版】社内プレゼンの資料作成術』『プレゼン資料のデザイン図鑑』『パワーポイント最速仕事術』(すべてダイヤモンド社)など。

堀口友恵(ほりぐち・ともえ)
埼玉県秩父市生まれ。立命館大学産業社会学部卒業後、ソフトバンクへ入社。技術企画、営業推進、新規事業展開などを担当する中で、プレゼンの経験と実績を積む。2017年に株式会社固へ転職し、スライドデザイナーとしての活動を始める。企業向け研修・ワークショップの担当や大学非常勤講師のほか、大手企業などのプレゼンのスライドデザインを担当し、のべ400件以上の資料作成やブラッシュアップを手がける。前田鎌利著の『プレゼン資料のデザイン図鑑』『パワーポイント最速仕事術』のコンテンツやスライドの制作にも深く関わった。ITエンジニア本大賞2020プレゼン大会にて、ビジネス書部門大賞・審査員特別賞を受賞。小学生向けのオンライン講座「こどもプレゼン教室」を運営し、子どもたちのプレゼンスキルアップの支援も行っている。