とはいえ、大学教員が自分のテーマについてしか話せないかといえば、決してそうではありません。とくに強調しておきたいのは、大学教員の多くが「学会」に所属しており、そこで自らのテーマ以外の情報にも触れているという点です。

学会は多様な知識に触れる場
自分の「引き出し」が自然と増える

 私自身の例で少し説明してみましょう。私の専門は教育社会学で、主に大学教育や大学院教育、高校教育、大学入試について研究してきました。

 そして、私が所属する学会のひとつに「日本教育社会学会」があります。これは、教育社会学を専門とする研究者の集まりで、1948年に創設され、2024年現在、約1500人の会員がいます。

 学会とは、発表や論文を通じて研究者がコミュニケーションを図る場と理解していただければと思います。私もここで、自身の研究成果を発表したり、まとめた論文を投稿したりしています。このようにして、自分(たち)の研究成果を知ってもらおうとするのです。

 だとすれば、学会は当然ながら、学会員であるほかの研究者や大学教員の研究を知る場でもあります。

 私が直接的にテーマとしていない課題、たとえば初等中等教育の問題や教育格差、いじめ、ジェンダー、ニューカマー、カリキュラム、家族、若者文化、逸脱といった多様なテーマについて、誰がどのような研究を行っているのかを聞いたり、読んだりすることができます。

 学会はこうした幅広い知識を得る場として機能しているのです。また、学会が企画するセミナーやシンポジウムには、教育社会学の研究者だけでなく、他分野の研究者や現場の教員が登壇することもあります。

 こうした多様な話題に触れることで、自分の「引き出し」も自然と増えていくわけです。