(…)まず、学生自身が面白いと思っていても、「問い」にまでなっていない段階であれば、「ここが面白いんじゃないか」ということ、そして「なぜ、私がそこを面白いと思うのか」ということを伝えるようにしています。
「あなたの話のどこが研究の種として面白いのか」ということを伝えようとしている、といってもいいかな。
「それは議論され始めているけど、まだ十分開拓されていないテーマだよ」とか、「あまり注目されてこなかったことをいま話しているから、そこにこだわってごらん」とか、「いま言ってることは、従来言われてきたことと逆のことだから、そこを掘り下げていくと面白いかも」とか。そういうアドバイスをすることで、モヤモヤした学生の興味関心を、研究へと引っ張り出す…。(…)

 教員は、学生が「現場の言葉」で語った興味関心を、「アカデミアの言葉」に翻訳するような指導もしていると表現できるでしょう。何気ない関心でも、それを教員に話すことで、研究の出発点へと導かれることがあります。

書影『大学でどう学ぶか』(濱中淳子、ちくまプリマー新書、筑摩書房)『大学でどう学ぶか』(濱中淳子、ちくまプリマー新書、筑摩書房)

 こうしたケースは少なくありませんし、大学教員の立場からすれば、そうした瞬間に立ち会えるのは大きな喜びです。

 いったん議論をまとめましょう。大学時代に自分の学びを大きく発展させたいのであれば、まずアウェイの世界に飛び込み、それまで経験したことのない刺激を受け、思考を活性化させる。

 そして、早い段階で教員に話しかけ、考えていることや興味、不思議に思っていることを伝え、アカデミアとの接点や興味関心の育て方についてヒントをもらう。

 このようなスタンスで過ごすことがなによりも重要だというのが、30年近く大学に身を置き、学生の学習や成長について考察し、学生たちの声を聞いてきた私の結論です。