背中合わせで腕を組むビジネスパーソン写真はイメージです Photo:PIXTA

似たような学力、家庭背景の集団に居続けると似たような興味関心や話題を共有して過ごすことになり、視野が狭くなってしまう可能性がある。あえて「アウェイに飛び込む」ことがキャリアに与える影響を解説する。※本稿は、濱中淳子『大学でどう学ぶか』(ちくまプリマー新書、筑摩書房)の一部を抜粋・編集したものです。

高校の「輪切り問題」
学力と家庭背景には相関がある?

 高校は基本的に学力(偏差値)によって入学者を選抜しています。そして、その学力の幅は非常に限られています。「輪切り」と表現することもありますが、重要なのは、学力と家庭背景の間にはある程度強い相関がみられるという事実です。

 似たような学力で選ばれた集団は、似たような家庭背景をもつ集団になっている。

 高校に学校特有の文化が形成される背景には、大学進学に対する考え方や学業面での得手不得手も関係していますが、家庭背景が似た集団であることも無視できない要因だといえます。

 そのうえで強調したいのは、支配的な文化のなかで過ごす時間が、必然的に思考停止をもたらしてしまう点です。似たような友人と、似たような関心や話題を共有して過ごす。それでは、視野は広がりません。

 世界が広がらなければ、自分の強みや弱み、そしてこの広い社会に存在しているさまざまな疑問や葛藤、不合理に気づくことも難しくなってしまう。鈍感になってしまうのです。

 最近の高校は、生徒たちの視野を広げるための機会を提供するようになっていると聞きます。社会で活躍する卒業生を呼び、在校生に仕事の魅力を話してもらう。地域にフィールドワークにでかけ、街の人の話を聞く。探究活動の時間をとる。素晴らしい試みです。

 けれども、こうした試みの効果には限界があります。たとえ刺激を受けても、その直後に「自分と似た集団」での生活に戻ってしまうため、刺激はいずれ忘れ去られてしまうのです。