プロフィールや授業内容だけでは
読み取れない大学教員の知識

 以上、学会を例に説明しましたが、大学教員が引き出しを増やす場は学会だけに限りません。大学教員は、所属する大学での日々の業務を通じて、他分野の教員とともに仕事をしています。その最中の会話のなかで引き出しが増えることもあります。

 また、企業や自治体との関係を通じて知見を広げることもあるでしょう。さらに、自分の専門外の論文や書籍を日常的にチェックしている大学教員も少なくありません。

 いずれにしても、多くの大学教員は、プロフィールや授業内容からは読み取れない幅広い引き出しをもっていることを理解していただければと思います。

 大学教員に話しかけることの意味についてさらにイメージを深めてもらうため、ここで、ある大学教員の指摘を紹介したいと思います。私の友人で、東京大学大学院人文社会系研究科社会心理学講座の教授をしている村本由紀子さんによるものです。

 村本さんは、東京大学が高校生のために制作しているWEBサイト「キミの東大」でとても重要なことを話しています。卒業論文指導についてのインタビュー記事ですが、大学教員と学生のやりとりがどのようなものか、そのリアルな様子が描かれています。

 村本さんの指摘を2つほど引用するので、読んでみてください。

自分の興味関心を教員に話すと
研究の出発点に導かれることがある

(…)ここも大事なところなんだけど、私は学生たちに「最初から「研究になるものはどれか」とか、気にしなくていいよ」と伝えています。みんなが想像している以上に、結構「研究」になるものだから、あまり狭く考えなくていいよ、ってね。
 まずは関心を話してもらうのが大事で、学生本人がわかっていないところですごく面白いことを話していることがあるから、それに対して「そこ、面白いね!」っていうのが、自分の仕事かな、と思っています。